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伊藤致雄さんの新捕物シリーズに注目

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伊藤致雄(いとうむねお)さんの『銀のかんざし 定町廻り同心・榊荘次郎』を読んだ。「兵庫と伊織の捕物帖」シリーズで注目される、気鋭の時代小説家・伊藤さんが放つ文庫書き下ろし新シリーズである。

浅草左ヱ門町の長屋でひとり暮らしの女・お峰が殺された。死体を見つけたのは、お峰の落とした銀のかんざしを届けにきた飾職人の長七だった。長七は、現場に駆け付けた北町奉行所の定町廻り同心の榊荘次郎と同じ楓川の手習塾に通った仲で、京都に修行に行って六年半ぶりに江戸に戻ってきたところだった。お峰殺しの捜査は難航し、荘次郎は、手習塾の師匠の網田方舟を訪ねる…。

最初の事件を描く「弟弟子」のほかに、「転落」「強奪」「贈物」「一念の笛」の5つの物語を収録した、連作形式の捕物小説。とくに、「贈物」は推理小説ファンにたまらない謎解きがあり、手習の師匠の方舟の鮮やかな推理が楽。荘次郎に張り合う形で事件に絡んでくる長七の存在が物語を面白くしている。そういえば、「兵庫と伊織の捕物帖」でも、幼馴染の二人に将軍吉宗が絡むトライアングルの人物構造で物語が進んでいった。作者の得意な物語構成術かも。

文庫書き下ろしでは珍しく、余分なものを極力そぎ落としたライトな短編集で読みやすいが、心地よい物語の世界にもっと浸っていたと思った。このシリーズの長編を読んでみたい。

主人公の荘次郎は、奉行の曲淵甲斐守(まがぶちかいのかみ)に高く評価されているという設定だが、曲淵甲斐守って、野口武彦さんの『大江戸曲者列伝』に登場する、イヌを食えと言った曲淵のことだろうか?

大江戸曲者列伝―太平の巻 (新潮新書)

大江戸曲者列伝―太平の巻 (新潮新書)

おすすめ度:★★★★