塚本青史(つかもとせいし。正しい表記は「塚」の字には点が付いていて、「青」の下の部分は円の字である)さんの『孫子伝』を読む。孫子とは、中国の春秋時代の末期(紀元前6世紀後半)に活躍した、兵法家の孫武の尊称。この物語は、斉(せい)出身の孫武が、呉に兵法家として仕えて、紀元前506年を最後に歴史の表舞台から姿を消すまでの型破りな生涯を描く、中国時代小説である。
- 作者: ?本青史
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一種の時代小説といいながらも、古代の中国については守備範囲でなかったので、ほとんど予備知識がない中で読み進めた。しかし、主人公で軍事オタクの孫武、その押しかけ女房で料理が得意な巣夸(そうこ)、孫武のライバルの策謀家の范蠡(はんれい)など、魅力的なキャラクターを配し、史実や逸話を交えながら、孔子をはじめとした多士済々の春秋時代の有名人たちが入れ替わり登場し、中国の古代歴史ロマンが堪能できる。
登場人物たちが偉人然とせずに、生身の人間っぽくて、共感を持ちながら、古代中国史の面白さの一端に触れることができた。とはいえ、物語に描かれることの一つ一つが、自分自身にとって新しく知ることばかりであり、中国ものの知識があまりにもないので、もう少し知っていてもいいかなと思う。海音寺潮五郎さんにも『孫子』という作品があり、あわせて読み比べてみたいと思った。「孫子」は、日本の戦国時代の武将たちの戦いぶりを理解するうえでも、役立つ部分がある。
- 作者: 海音寺潮五郎
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