2025年4月刊行の光文社文庫が本棚に加わりました!
今月は、岡本さとるさんによる文庫書き下ろしシリーズ第2弾『父子桜 春風捕物帖』、仲野ワタリさんの文庫書き下ろし捕物小説『木戸芸者らん探偵帳』、そして戸部新十郎さんによる伝説の忍者小説『忍者 服部半蔵』の3冊をご紹介します。
『父子桜(おやこざくら) 春風捕物帖』
カバーイラスト:ふすい
カバーデザイン:大岡喜直(next door design)
あらすじ
町の者に人気の南町奉行所定町廻り同心・春野風太郎に、懇意の芸者・お松から呼び出しがかかる。
話によると、上方から来た客が風太郎の話をしていたという。風太郎には心当たりがあった。
その後、「宿敵」が引き起こす異変が、風太郎の周囲で次々と起こり始める。風太郎が最後に下した決断とは――。
笑いあり涙ありの爽快な新捕物帖シリーズ、待望の第2弾!
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
歳は三十二で独身。きりりとした目元にふっくらとした顔立ち、切れ上がった口元に愛嬌が漂う春野風太郎。男女問わず人気の、情に厚い人情派の同心です。
女嫌いの御用聞き・喜六、上方訛りの残る小間物屋・礼次とともに難事件に挑む、爽快な人情捕物シリーズです。
乗物医者(自家用の駕籠で往診が許された町医者)がある夜、駕籠を使わず一人で往診に出たきり戻らなくなる。失踪か、誘拐か――? 医者の妻から相談を受けた風太郎らが捜索に乗り出します(「父子桜」より)。
今回も表題作をはじめ、風太郎と仲間たちの活躍を描く、笑いと涙あふれる全4話を収録。
目次
第一章 父子桜
第二章 正義の師
第三章 夏の風
第四章 宿敵
2025年4月20日 初版1刷発行
本文291ページ
本作は2023年10月、光文社より刊行された単行本を文庫化したもの。

『木戸芸者らん探偵帳』
カバーデザイン:荻窪裕司
カバーイラスト:おおさわゆう
あらすじ
らんは、芝居小屋「京屋座」に仕える、両国初の女性木戸芸者。老若男女の声色を使い分け、見事に客を誘う。
ある日、目明かしの源助と辻斬りがにらみ合う現場に遭遇。襲いかかられそうになった源助を、らんの機転が救う。
その才に目をつけた源助は、辻斬りを追うため、らんに探偵としての協力を持ちかける――。
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
著者の仲野ワタリさんは、児童文学やライトノベルでも活躍する作家。
時代小説では「猫手長屋事件簿」シリーズ、『幕末五七五!』(白泉社まねき猫文庫)、「猫の神さま」シリーズ(ハルキ文庫)など、人情ファンタジー長屋ものを得意とします。
木戸芸者を探偵役とした設定がユニーク。「芸者」と言っても、木戸芸者は舞を披露する接待芸者ではなく、芝居小屋の入口で番付を読み上げ、声色を駆使して客を呼び込む“劇場の案内人”です。
七色の声を使い分けるらんは、まさに江戸の声優。
その設定も物語の魅力となっています。
※目次の記載はありません
2025年4月20日 初版1刷発行
本文291ページ
文庫書き下ろし

『忍者 服部半蔵』
カバーデザイン:高林昭太
カバー写真:能面(スウェーデン民族学博物館蔵)
あらすじ
今川義元をはじめとする群雄が割拠する戦国時代。
伊賀の服部宗家に生まれ、“梅の木”と呼ばれた美しい少年は、過酷な試練を経て成長し、やがて同族争いを制して“半蔵”の名を継ぐ。
桶狭間の戦いで信長に見出され、秀吉、千利休、家康と邂逅を重ね、忍びとして高みへと昇っていく――。
格調高い筆致で歴史の闇に生きた男の姿を描いた傑作長編。
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここに注目!
著者・戸部新十郎さんは、剣豪小説・忍者小説の名手として知られ、2003年に逝去されました。
大衆小説家の研鑽の場である「新鷹会」に参加し、1973年には短編「安見隠岐の罪状」で第70回直木賞候補にも選ばれています。
本書は、代表作のひとつ『服部半蔵』全10巻に先立って執筆された長編で、今回初めて文庫化された貴重な一冊です。
今川義元、信長、秀吉、千利休、家康といった戦国の実力者のほか、柳生新右衛門(宗厳)、塚原卜伝、加当段蔵、果心居士など、剣豪・忍者小説ではおなじみの人物も多数登場します。
特に注目したいのは、後に隆慶一郎さんの『影武者徳川家康』を想起させる、願人衆の駿河の二郎三郎の存在です。さらに、景教やアルビ派といったキリスト教系の異端宗派も描かれ、伝奇色豊かな世界観が広がっています。
目次
梅の木
稚児の花
ちがんど
陽炎
一期の境
むくろじ
行乞
焔
よみがえり
解説 細谷正充
2025年4月20日 初版1刷発行
本文349ページ
1972年2月毎日新聞社刊
