蝦夷地を探検した最上徳内を描く歴史小説とユーモア小説第2弾
2025年3月刊行のPHP文芸文庫が新たに本棚に加わりました。
今月は、西條奈加さんの歴史小説、『六つの村を越えて髭をはびかせる者』、風野真知雄さんのユーモア時代小説、『象が来たぞぉ(二) くノ一忍湯帖』の2冊。
『六つの村を越えて髭をはびかせる者』
装丁:芦澤泰偉
装画:ヤマモトマサアキ
あらすじ
江戸中期、算学の才能を持つ最上徳内は、幕府が派遣する蝦夷地見分隊に随行することに。
彼が目にしたのは、厳しくも美しい北の大地と、和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの人々の姿だった。
少年フルウらとの出会いを通して、徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていくが……。
松前藩との確執、幕府の思惑、自然の脅威など、様々な困難を乗り越えながら、北の大地を目指した男の生き様を描く、著者渾身の長編小説!
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここがポイント
算学を志す最上徳内は、師・本多利明の供として幕府の蝦夷地見分隊に加わり、北の大地へ向かいます。
過酷な自然の中で逞しく生きるアイヌの人々と出会い、その文化に触れる中で、彼の心には尊敬と友愛が芽生えていきます。
幾多の困難にも負けず、九度にわたって蝦夷地を訪れ、アイヌ文化を後世に伝えた徳内の生涯を描く歴史小説です。
タイトルは、アイヌ語の「イワン コタン カマ レキヒ スイェプ ヘマンタ ネ ヤー(六つの村を越えて、髭をなびかせる者)」から。
目次
第一 音羽塾
第二話 松前
第三話 アッケシ
第四話 フリゥーエン
第五話 イコトイ
第六話 陸の海
第七話 霧の病
第八話 外つ国の友
第九話 実らずの実
第十話 朗々
第十一話 野辺地
第十二話 乱
第十三話 鎮撫
第十四話 凱旋
第十五話 空蝉
第十六話 光明
最終話 六つの村を越えて髭をなびかせる者
参考文献
2025年3月21日 第1版第1刷
本文478ページ
本作は2022年1月、PHP研究所より刊行された単行本を文庫化したもの。

『象が来たぞぉ(二) くノ一忍湯帖』
装丁:芦澤泰偉
装画:おとないちあき
あらすじ
仙台藩の忍び・黒脛巾組から逃れた湯煙り権蔵とくノ一・あけび。
彼らは「おくのほそ道」に隠された金塊の謎を解くため、再び北へと向かう。
一方、長崎から広島へと歩みを進める象の周囲では、怪しい唐人屋敷の一味が暗躍し、あけびの妹・あわびは象を守るために奔走する。
さらに街道筋のやくざ者たちまでが象を狙い始め……?
ユーモア時代小説の名手が描く、痛快な人気シリーズ第2弾!
(カバー裏の説明文より抜粋・編集)
ここがポイント
芭蕉が残した「おくのほそ道」に隠された金塊の謎を追う湯煙り権蔵とくノ一・あけび。
河合曽良が鍵を握る機密を手に入れたものの、それを奪われてしまう展開に。
また、吉宗が長崎から呼び寄せた巨象が、各地で巻き起こす騒動をコミカルに描きつつ、あけびの妹・あわびの活躍も見どころです。
ユーモア小説の名手が織りなす、軽妙な筆致をお楽しみください。
目次
第一章 ぞうは何者?
第二章 海峡越え
第三章 やくざの乱入
第四章 逆のほそ道
第五章 広島城下の暗雲
第六章 桃子、象に一目惚れ
第七章 輝かない光堂
第八章 芭蕉の悪い仲間たち
第九章 象を使った金儲け
第十章 天文学者・徳川吉宗
2025年3月21日 第1版第1刷
本文253ページ
初出:
本書は、2023年2月から2025年1月にわたって、『河北新報』『南信州新聞』『長野日報』『桐生タイムス』『大分合同新聞』『北鹿新聞』『三條新聞』『山梨日日新聞』『北海民友新聞』など各紙に順次掲載された作品を加筆修正したもの。

まとめ
・3月のPHP文芸文庫は、歴史小説とユーモア時代小説の2作品
・最上徳内の生涯を描く『六つの村を越えて髭をはびかせる者』
・痛快な忍者×象の物語『象が来たぞぉ(二) くノ一忍湯帖』
どちらも読み応えたっぷりの一冊です。