2024年時代小説(単行本/文庫書き下ろし)ベスト10、発表!

「時代小説●2025年3月中旬の新刊情報(文庫)」を公開

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『上海灯蛾』|上田早夕里|双葉文庫

上海灯蛾2025年3月11日から3月20日に刊行予定の文庫新刊情報として、 「2025年3月中旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。

今回、特に注目したいのは、上田早夕里(うえだ・さゆり)さんによる歴史エンターテインメント『上海灯蛾(しゃんはいとうが)』(双葉文庫)です。

著者について
上田早夕里さんは、2003年に『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、プロデビューしました。
『夢みる葦笛』などSF小説での活躍が顕著でしたが、本書や第159回直木賞候補作となった『破滅の王』、『ヘーゼルの密書』などの戦時上海三部作も高く評価されています。
また、室町時代を舞台にした「播磨国妖綺譚」シリーズなど、歴史時代小説のジャンルでも注目の作品を発表されています。

あらすじ
1934年、上海。
「魔都」と呼ばれるほど繁栄と悪徳が渦巻くこの地に、成功を夢見て渡ってきた日本人の青年・吾郷次郎。
彼は、原田ユキヱと名乗る謎めいた女性から、極上の阿片と芥子の種を預かります。

次郎は上海を支配する青幇の一員である楊直と接触しますが、これをきっかけに裏社会へと深く足を踏み入れていきます。
彼の行く先は、栄光か、それとも破滅か――。

軍靴の響きが絶えない大陸で、阿片売買による莫大な富と帝国の栄耀に群がる者たち。
灯火に惹かれる蛾のように熱狂し、燃え尽きていった男たちの物語です。

(『上海灯蛾』(双葉文庫)Amazonの紹介文より抜粋・編集)

本書について
「歴史小説」とは、どこまでの時代を指すのでしょうか――。

ときには議論の的になることもありますが、少し前までは明治・大正時代までを扱うものと考えられることが一般的でした。
しかし、その認識を大きく変えたのが、2023年に刊行された本書『上海灯蛾』(単行本)でした。

その年の第12回日本歴史時代作家協会賞の選考時に、作品賞候補として本作が挙がりました。
それまで歴史小説の範囲外とされることが多かった作品を候補とするにあたり、選考委員会では「歴史小説」の定義を見直し、太平洋戦争の戦時下から終戦までを含むことを決定しました。

さらに、同年の作品賞候補には橘かがりさんの『女スパイ 鄭蘋茹(テンピンルー)の死』、新人賞候補には青波杏さんの『楊花(ヤンファ)の歌』が選ばれました。
いずれも**1930年代後半から1940年代前半(昭和10年代)**を舞台にした作品であり、日本が戦争へと向かう時代を描いています。
これらの作品が候補に挙がったことは、選考委員の意識を変えるきっかけとなりました。

そして、本作『上海灯蛾』は、第12回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞しました。

作品の魅力
本書は、日中戦争目前の上海の暗黒街で、一人の青年が成り上がっていくノワール小説です。
また、阿片売買がもたらす膨大な富に群がる人々の姿を、灯火に惹かれる蛾のように描いた戦時ロマンでもあります。

歴史サスペンスに科学の要素を加えた戦時上海三部作の中でも、最もエンターテインメント色が強い作品です。
昭和100年にあたる2025年、文庫化を機に改めて読み返したい、昭和の1コマを活写した傑作のひとつです。

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今回ご紹介した本



上田早夕里|時代小説ガイド
上田早夕里|うえださゆり|小説家兵庫県出身。2003年、『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年、『華竜の宮』で第32回日本SF対象を受賞。2018年、『破滅の王』で第159回直木賞候補となる。2023年、『...