敵は家康|早川隆|アルファポリス文庫
早川隆(はやかわ・たかし)さんの『敵は家康』(アルファポリス文庫)が新たに本棚に加わりました。
本作はアルファポリスの第6回歴史・時代小説大賞で特別賞を受賞し、2022年2月に単行本として刊行されました。
「時代小説SHOW」の2022年度『時代小説SHOW』ベスト10単行本部門で10位に選出された、思い入れのある一冊です。
物語のあらすじ
桶狭間の合戦前夜、名もなき青年が若き日の戦国覇者に挑む!
礫(つぶて)投げが得意な若者・弥七は、「陰(ほと)」と呼ばれる貧しい集落で地を這うように生きてきた。ある日、誤って礫で他人の命を奪ってしまい、元盗賊の「ねずみ」という男とともに村を離れる。やがて弥七は、作事集団・黒鍬衆の一員として尾張国の砦造りに関わり、生きがいを見出す。しかし、その砦に松平元康(のちの徳川家康)が攻め寄せ、弥七の運命は大きく揺れ動く――。
(『敵は家康』カバー帯の紹介文より抜粋・編集)
読みどころ
泥の中で生まれ、泥の中で育ち、泥の中を這いずり回る青年、弥七。彼は三河国の矢作川流域にある谷間の地・陰(ほと)で育った河原者(被差別民)であり、農民たちから迫害を受けながら生きてきました。
ある日、仲間が農家の子弟の放った矢で命を落とし、口封じのために弥七と河原者「ねずみ」も殺されそうになります。怒りに駆られた弥七は、得意の礫投げで応戦し、運命を大きく変えることに。
武器とも言えない礫(つぶて)を手に、無名の青年が若き日の天下人に挑むという壮大な構想に心を奪われました。図らずも命を奪ってしまった弥七は、ねずみとともに村を出奔し、やがて桶狭間の戦いへと向かうことになります。
本作では、雑兵ですらない、城や砦の作事を担う黒鍬衆の若者の視点から、戦国時代のリアルな人間ドラマが描かれています。ロマンあふれるストーリー展開と、迫力満点の戦闘シーンに圧倒されること間違いなし。
さらに、弥七の相棒となる元盗賊の河原者「ねずみ」も魅力的なキャラクターで、物語に深みを与えています。
今回の文庫化では、全編にわたる加筆修正が施され、著者の3年間の進化を実感できる作品になっています。
★単行本のレビュー
今回取り上げた本
書籍情報
敵は家康
早川隆
アルファポリス文庫
発行:アルファポリス
発売:星雲社
2025年2月10日初版発行
Illustration:獅子猿
DesignWork:AFTERGLOW
目次:
なし
本文527ページ