2024年時代小説(単行本/文庫書き下ろし)ベスト10、発表!

【新着本】松永弘高『先駆け勘兵衛』賤ヶ岳で躍動する武将活劇

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先駆け勘兵衛|松永弘高|小学館文庫

先駆けの勘兵衛 (小学館文庫)
松永弘高(まつなが・ひろたか)さんの『先駆け勘兵衛』(小学館文庫)が新たに本棚に加わりました。

本書の主人公渡辺勘兵衛は、「槍の勘兵衛」と称される戦国時代の名槍使いで、「渡辺了(さとる)」の名でも知られています。近江国の出身で、浅井家に仕える阿閉貞征(あつじ・さだゆき)の家臣として、天正五年(1578)に16歳で初陣を迎え、数々の武功を挙げました。しかし、主家の滅亡や主君の死、意見の対立などにより、度々浪人となる波乱万丈の生涯を送りました。

著者について
松永弘高さんは、2014年に「太平に蠢く」(単行本化の際に『決戦! 熊本城 肥後加藤家改易始末』と改題)で第六回朝日時代小説大賞優秀作に選ばれました。その後、『決戦! 広島城 天下大乱の火種を消すべし』など、戦国から江戸初期を舞台にした歴史小説を執筆し、武将たちの活躍を描き続けています。

物語のあらすじ

戦国のフリーランス武将、颯爽と登場!

精鋭部隊・母衣衆の一員として「槍の勘兵衛」と称された渡辺勘兵衛。しかし、本能寺の変後、主君・阿閉貞征が山崎の合戦で敗北し、彼も命からがら逃げ延びることに。以前、引き抜きを受けていた羽柴秀吉との面会に漕ぎつけるが、加藤虎之介や福島市松、加藤孫六から厳しいきつい洗礼を浴びる。何とか秀吉の養嗣子・秀勝の家臣となった勘兵衛は、旧知の藤堂高虎とともに、柴田勝家の軍勢と賤ヶ岳で対峙する。戦国から江戸初期にかけて、多くの武士たちに支持された渡辺勘兵衛の生涯を描く長編武将活劇!

(『先駆け勘兵衛』カバー帯の紹介文より抜粋・編集)

読みどころ

「主とは、仕えるものではなく、選ぶものなり。」

これは文庫の帯に記されたキャッチコピーですが、本書の魅力を的確に表しています。

戦国時代、武将の中には主君を自由に選び、合戦で武功を示してより好条件の主君を探す者もいました。渡辺勘兵衛も、そうした「渡り奉公人」と呼ばれるフリーランス武将の代表格の一人です。彼のような武将には、後藤又兵衛基次花房助兵衛職秀塙団右衛門直之などがいます。彼らは初期の司馬遼太郎さんの短編でも取り上げられています。

本書の注目点は、読み切り短編や長編ではなく、シリーズ化が期待される文庫書き下ろし作品であることです。
520ページを超える大長編に、若き日の勘兵衛が、波乱に満ちた戦場を駆け巡る姿が生き生きと描かれています。さらに、戦場を舞台に次々と新たな主君のもとで手柄を立てていく勘兵衛の姿は、痛快な戦場お仕事小説としても楽しめます。

柳ヶ瀬合戦」とは、一般に「賤ヶ岳合戦」として知られる、織田信長の後継者をめぐる戦いです。柴田勝家軍が布陣を敷いたのは近江国柳ヶ瀬ですが、「賤ヶ岳七本槍」の存在から、後世では「賤ヶ岳合戦」として広く語られるようになりました。

なお、渡辺勘兵衛を描いた歴史時代小説には、司馬遼太郎さんの短編「侍大将の胸毛」(『一夜官女』収録)や、池波正太郎さんの『戦国幻想曲』中路啓太さんの『三日月の花 – 渡り奉公人 渡辺勘兵衛』があります。

今回取り上げた本






書籍情報

先駆け勘兵衛
松永弘高
小学館・小学館文庫
2025年2月11日初版第一刷発行

カバーイラスト:西山竜平
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)

目次:
変転 ――回想――
天下人の葬礼
武功を求めて
柳ヶ瀬の陣
武功の者

本文521ページ
文庫書き下ろし

松永弘高|時代小説ガイド
松永弘高|まつながひろたか|時代小説・作家1976年、東京都生まれ。明治大学卒業。2014年、「泰平に蠢く」(単行本刊行時に『決戦! 熊本城 肥後加藤家改易始末』と改題)が、第6回朝日時代小説大賞優秀作に選ばれる。時代小説SHOW 投稿記事...