2024年時代小説(単行本/文庫書き下ろし)ベスト10、発表!

【新着本】鳴海章『鬼哭 帝銀事件異説』昭和史ミステリーに挑む

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

鬼哭 帝銀事件異説|鳴海章|小学館

鬼哭  帝銀事件異説 (単行本)
鳴海章(なるみ・しょう)さんの 『鬼哭 帝銀事件異説』(小学館)が、本棚に新たに加わりました。

2025年は、昭和元年(1926年)から数えて昭和100年の節目にあたる年です。昭和生まれでありながら、昭和前期から中期にかけての出来事について、詳しく知らないことが多いと感じています。「下山事件」「狭山事件」「松山事件」など、未解決や冤罪の疑いがある大事件についても、その詳細は知らないままでした。

「帝銀事件」についても名前だけは聞いたことがありましたが、具体的な内容についてはほとんど知りませんでした。この事件は、昭和23年1月26日、豊島区長崎の帝国銀行椎名町支店で発生した銀行強盗事件です。犯人は行員や用務員とその家族、合計16名に毒物を飲ませ、そのうち12名を殺害した後、現金と小切手を奪ったというものでした。

本書のタイトルにある「鬼哭」は、「浮かばれない霊魂が泣くこと、またはその声」を意味します。副題の「帝銀事件異説」が示す通り、この小説は戦後最大のミステリーとも言われる「帝銀事件」の謎に挑む昭和史ミステリーです。

帝銀事件の背景
帝銀、すなわち帝国銀行は1943年に三井銀行と第一銀行が合併して誕生した日本最大の都市銀行でした。1944年には十五銀行を合併しますが、合併の効果は得られず、1948年に新設分割され、第一銀行と帝国銀行となります。その後、1954年に帝国銀行は三井銀行に改称されました。

著者について
鳴海章さんは、1991年に 『ナイト・ダンサー』(講談社文庫)で第37回江戸川乱歩賞を受賞しデビューしました。また、画家松本竣介の生涯を描いた 『竣介ノ線』(集英社文庫)をはじめ、航空、警察、アクションなど幅広いジャンルの作品を手掛けています。
時代小説では「幕末牢人譚」シリーズ(集英社文庫、全3巻)も発表されています。

物語のあらすじ

昭和23年、12人が毒殺された「帝銀事件」。実行犯が告白する真実とは?

亡くなった祖母の遺品整理のため訪れた父の実家で、穂月沙里は近所の古書店主から「穂月広四郎記」と題された奇妙な手帳を預かる。祖母が「沙里が来たら渡すように」と店主に伝えていたという。祖母が昭和23年に帝国銀行椎名町支店で発生した「帝銀事件」に関連する資料を古書店で多数購入していたことが判明する。

謎の手帳には、広四郎という人物が地元の石井という有名人が創設した部隊に入るため満洲に渡り、壮絶な体験をした記録が残されていた……。め満洲に渡った広四郎なる人物の、壮絶な体験が記されていて……。

(『鬼哭 帝銀事件異説』カバー帯の紹介文より抜粋・編集)

読みどころ

穂月沙里(ほづき・さり)は、祖母の遺品整理で訪れた家で、曾祖父が遺した手帳を発見します。その中には「帝國銀行椎名町支店デ行員トソノ家族十六名二毒ヲ服マセ、ソノウチ十二名ヲ死ニ至ラシメ……」という衝撃的な記述がありました。

沙里はスマートフォンで「帝銀事件」を検索し、事件の概要や犯人がすでに獄中で亡くなっていることを知ります。「どうして、私に?」とつぶやきつつ、曾祖父の文章の続きを読み始めます。

曾祖父・広四郎は、太平洋戦争中に満洲へ渡り、関東軍防疫給水部七三一部隊に配属されました。手帳には広四郎が体験した壮絶な出来事が記されており、彼が「帝銀事件」にどのように関わっていくのか、さまざまな謎が描かれています。
本書は、読者を昭和史の深い闇へと引き込んでいきます。

今回取り上げた本




書籍情報

鬼哭 帝銀事件異説
鳴海章
小学館
2025年1月27日初版第一刷発行

装幀:國枝達也
写真:毎日新聞社提供

目次:
序章 テイギンジケン
第一章 ハルピンへ
第二章 窮鼠
第三章 登戸から来た男
第四章 帝国崩壊
第五章 再生
第六章 青鬼
終章 家族

本文365ページ

鳴海章|時代小説ガイド
鳴海章|なるみしょう|小説家1958年、北海道帯広市生まれ。日本大学法学部卒業。1991年、航空小説『ナイト・ダンサー』で第37回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。時代小説SHOW 投稿記事→鳴海章の本(Amazonより)⇒時代小説作家リスト...