『おんなの女房』|蝉谷めぐ実|角川文庫
2025年1月21日から1月31日に刊行予定の文庫新刊情報として、 「2025年1月下旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回特に注目したいのは、蝉谷めぐ実(せみたに・めぐみ)さんの時代小説、『おんなの女房』 です。
本作は、2022年に第10回野村胡堂文学賞を受賞し、翌2023年には第44回吉川英治文学新人賞を受賞した話題作で、待望の文庫化となります。
また、表紙装画を漫画家のおかざき真里さんが担当されている点も注目です。
著者について
著者の蝉谷めぐ実さんは、『化け者心中』 で第11回小説野性時代新人賞を受賞してデビューしました。同作は2021年に第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞および第27回中山義秀文学賞を受賞しています。さらに、2024年には第4作目となる 『万両役者の扇』 で第15回山田風太郎賞を受賞しました。
江戸の芝居の世界を題材にした異なる作品で次々に文学賞を受賞する蝉谷さんは、今最も注目されている時代小説家の一人です。
あらすじ
ときは文政、ところは江戸。武家の娘・志乃は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぐ。夫となった喜多村燕弥は、江戸三座のひとつ、森田座で評判の女形。家でも女としてふるまう、女よりも美しい燕弥を前に、志乃は尻を落ち着ける場所がわからない。
私はなぜこの人に求められたのか――。
芝居にすべてを注ぐ燕弥の隣で、志乃はわが身の、そして燕弥との生き方に思いをめぐらす。
女房とは、女とは、己とはいったい何なのか。
いびつな夫婦の、唯一無二の恋物語が幕を開ける。(『おんなの女房』(角川文庫)Amazonの紹介文より抜粋・編集)
芝居を見たこともなく、慎ましやかに暮らしていた下級武士の娘・志乃が、評判の女形・喜多村燕弥に嫁いだことで始まる恋物語です。軽妙なタッチで描かれた恋愛小説ながら、根底には歌舞伎の世界に生きる人々の情念が濃密に描かれており、知らず知らずのうちに著者の術中に引き込まれます。