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【新着本】吉田雄亮『聞き耳 暴き屋侍』江戸の“瓦版砲”が悪を暴く

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聞き耳 暴き屋侍|吉田雄亮|コスミック時代文庫

『聞き耳 暴き屋侍』(コスミック時代文庫)吉田雄亮(よしだ・ゆうすけ)さんの『聞き耳 暴き屋侍』(コスミック時代文庫)が、本棚に新たに加わりました。

「聞き耳幻八」というタイトルに聞き覚えがある方もいるかもしれません。本作は、2006年9月に双葉文庫から刊行された『聞き耳幻八浮世鏡 黄金小町』を改題し、大幅に加筆修正した作品です。

吉田雄亮さんは、2002年に『修羅裁き 裏火盗罪科帖』でデビューして以来、多くの読者を魅了してきたベテランの時代小説家です。今回の作品が「時代小説SHOW」での初紹介となることを、大変嬉しく思います。

物語のあらすじ

大量殺人を行う闇組織。物書き侍の朝比奈幻八が筆と剣で追い詰める――

小普請組組下で微禄の御家人の嫡男、朝比奈幻八は瓦版の文言書きを生業とする物書き侍。剣一筋で無役の父や、捨て子を拾って育てる妹を支えながら家計を一手に担う。そんな中、大川端で売れっ子芸者の死骸が発見され、事件の真相を探り始めた幻八は、思わぬ大事件に巻き込まれていく。瓦版記事を書くという武器を手に、北町奉行・遠山金四郎とともに巨悪を追うが、その先には何が待ち受けているのか――。

(『聞き耳 暴き屋侍』カバー帯の紹介文より抜粋・編集)

読みどころ

本書の舞台は、天保十二年(1841年)。遠山左衛門尉景元、通称「遠山の金さん」が北町奉行に就任した年です。

主人公の朝比奈幻八は、「聞き耳幻八」の異名を持つ瓦版の文言書き(ライター)であり、人情本の戯作も手掛ける人物です。御家人の嫡男ながら、実家の本所ではなく深川の芸者・駒吉の家に居候しており、極貧の家計を一人で支える日々を送っています。

剣術に明け暮れる父や、捨て子を見かけると家に連れ帰り育てる妹に代わり、幻八が家族を支えるために奮闘する姿は痛快かつ切実です。しかし、彼がただの正義漢ではない点が、本書の大きな魅力です。

幻八は、瓦版記事を書くことを隠れ蓑に、暴き屋稼業を営んでいます。醜聞をネタに金を得るという、倫理的に曖昧な行動をとりながらも、貧困や捨て子問題に無策である幕政や、贅を尽くす大身武士・富商たちへの憤りを抱いています。こうした背景が、物語の奥行きを深めています。

幻八の心境の変化や成長も見どころです。妹が拾った捨て子たちを最初は疎んじていた幻八が、彼らの成長する姿を見て家族としての絆を感じ、彼らのために稼ぐ覚悟を持つようになる――。その過程で、幻八の「アウトロー的」な魅力が一層際立つ、痛快な時代小説です。

今回取り上げた本
書籍情報

聞き耳 暴き屋侍
吉田雄亮
コスミック出版・コスミック時代文庫
2025年1月25日初版発行

カバーイラスト:浅野隆広
ロゴデザイン:恒川東吾(グレートインターナショナル)

目次:
第一章 大川ノ辺
第二章 日暮ノ里
第三章 音羽ノ森
第四章 不忍ノ宴
第五章 入江ノ鐘

本文306ページ
『聞き耳幻八浮世鏡 黄金小町』(双葉文庫、2006年9月刊)を改題し、大幅に加筆修正したもの。

吉田雄亮|時代小説ガイド
吉田雄亮|よしだゆうすけ|時代小説・作家1946年、佐賀県生まれ。雑誌編集者、フリーライターを経て、2002年、『修羅裁き 裏火盗罪科帖』で、時代小説デビュー。時代小説SHOW 投稿記事→吉田雄亮の本(Amazonより)⇒時代小説作家リスト...