『若親分、起つ 目明かし常吉の神楽坂捕物帖』|伍代圭佑|潮文庫
伍代圭佑(ごだいけいすけ)さんの『若親分、起つ 目明かし常吉の神楽坂捕物帖』(潮文庫)を本棚にお迎えしました。
著者は、若くして江戸留守居役に抜擢された小藩の若侍・高瀬桜之助の活躍を描いた『江戸留守居役 浦会』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)シリーズを発表し、時代小説ファンの注目を集める気鋭の作家です。
本書は、駆け出しの目明かしの若親分が活躍し、腕利きの子分やおちゃっぴな娘も登場する、楽しみな捕物小説です。
神楽坂で名を馳せた目明かしの鐵が謎の死を遂げる。腹には横一文字に斬られた傷。のんべんだらりと毎日を送っていた鐵の息子の常吉が跡を継ぎ「神楽坂の若親分」となった。鐵の右腕だった腕利きの子分や一癖も二癖もある親分衆、仲間たちの手助けで常吉は父の死の真相を追っていく。父の情婦とおぼしき女の存在が浮かびあがったと思いきや、女の夫もやはり父と同じように斬られて死んでいた――。事件はやがて大奥や公儀中枢にまで及び、国を傾けかねない一大事が見え隠れし始める。
(『若親分、起つ 目明かし常吉の神楽坂捕物帖』カバー帯の説明文より)
物語の舞台は、寛政五年(1793)の年の瀬を迎える頃の江戸・神楽坂。武家屋敷や寺社が並び、その合間に町家が広がる活気あふれる街で、赤城明神をはじめとする名所も登場し、当時の江戸の風情が色濃く描かれています。
主人公の常吉は、名うての目明かしである父を持ちながらも、寄席に入り浸り、怠惰な日々を送っていました。しかし、父が日本橋で無惨にも殺されたという知らせを受け、しかもその腹には横一文字の不気味な刀傷が残されていたことを知ったとき、常吉の中で何かが変わります。父の跡を継ぎ、「神楽坂の若親分」として真相を追う決意を固めた彼は、町人や武士たちが交錯する江戸の裏社会で活躍を見せることに。
個性豊かな登場人物たちと、江戸の粋な風景が彩るこの捕物帖。
ユーモアあふれるキャラクターや人情味に満ちた物語を楽しみながら、常吉とともに江戸の謎に挑んでみたくなりました。
若親分、起つ 目明かし常吉の神楽坂捕物帖
伍代圭佑
潮出版社・潮文庫
2024年10月20日初版発行
装画:井筒啓之
カバーデザイン:坂野公一(welle design)
●目次
第一章 腹一文字
第二章 鐵の情婦
第三章 備中屋の変事
第四章 木蓮寺
第五章 岩井屋敷、動く
本文245ページ
文庫書き下ろし
■今回取り上げた本