『蔦屋』|谷津矢車|文春文庫
2024年10月1日から10月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2024年10月上旬の新刊(文庫)」を掲載しました。
今回は、谷津矢車さんの時代小説、『蔦屋』に注目しています。
2025年のNHK大河ドラマは『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』です。
このドラマでは、江戸時代の出版プロデューサーである蔦屋重三郎の波乱万丈な人生が描かれます。彼がどのような人物として描かれるのか、また、彼が光を当てた戯作者や絵師たちとともに、彼が生きた時代がどのように活写されるのか、今からとても楽しみです。
寄る年波には勝てず、店仕舞いしようとしていた地本問屋・丸屋小兵衛のもとを、才気迸る若い男が訪ねてくる。この店に毎年二十両払うから、雇われ人となって自分を手伝ってほしい、という申し出に面食らう小兵衛。
「一緒にやりませんか。もう一度この世間をひっくり返しましょうよ」
その男こそ、吉原随一の本屋、飛ぶ鳥を落とす勢いの蔦屋重三郎だった――。
飲むときはとことん飲み、遊ぶときはとことん遊ぶ。商売の波に軽々と乗り、つねに新しいものを作りたい、と意気込む重三郎。重三郎の周りには、太田南畝、朋誠堂喜三二、山東京伝、恋川春町ら売れっ子戯作者や狂歌師が出入りするが、腐れ縁の絵師・喜多川歌麿には、特別な感情をもっている。
やがて松平定信による文武奨励政治が始まると、時代の流れは予期せぬ方向へ――。(『蔦屋』(文春文庫)Amazonの紹介より)
本書は、蔦屋重三郎の型破りな半生を、父親ほど年の離れた小兵衛を通じて描いています。最強のバディが江戸の街を闊歩する、極上のエンターテインメント小説です。
単行本は、2014年に学研プラスから刊行されました。
当時のレビューを読み返すと、帯に書かれた「“二十代最強の時代小説家” 谷津矢車第二作」とキャッチコピーが目に留まっていました。
今回、10年の時を経て大幅に改稿し、著者によるあとがき「文庫化までの長い言い訳」も特別収録しています。
文庫化を機に、今、読むしかありません。
■今回ご紹介した本