「大衆文芸」2024年夏号|新鷹会
財団法人新鷹会が発行する会報誌「大衆文芸」2024年夏の号が届きました。
新鷹会(しんようかい)は、1940年(昭和15年)に、作家長谷川伸さんを中心にして、新しい文学の創造と開拓をめざした当時の新人たち村上元三さん、山岡荘八さん、大林清さん、山手樹一郎さん、長谷川幸延さんらが結成した団体です。
その後、池波正太郎さん、平岩弓枝さんも新鷹会の勉強会で研鑽を積まれて、大いに活躍されたことは知られるところです。
「大衆文芸」2024年夏号では、「特集・西村京太郎三回忌」として、2022年3月に亡くなられた西村京太郎さんを偲ぶものになっています。
時代小説のイメージが強い「大衆文芸」と偉大なミステリー作家の関係に最初は奇異な印象がありましたが、記事を読んで、深いつながりを知って納得し、とても興味を持ちました。
1968年~1971年にかけて、西村さんは「大衆文芸」に精力的に短編・長編、エッセーを発表されていました。
西村さんは、1963年に「歪んだ顔」で第2回オール讀物推理小説新人賞受賞し、1965年に『天使の傷痕』で第11回江戸川乱歩賞受賞し、1978年にその後大ベストセラーとなる鉄道ミステリー第1作『寝台特急殺人事件』を発表されました。
国民的な人気作家として羽ばたく成長の時期を、新鷹会で過ごされたことを知りました。
特集では、会員による追悼エッセーとともに、西村さんのエッセー2本と短編「告発」が再掲されていました。
「告発」は、スキャンダルで有名な女優の6歳の息子の死をめぐる警察小説です。
刑事と女優の息詰まるような対決、刑事の別れた妻への思いに絡めて描いた作品で、当時の作風や雰囲気を垣間見ることができます。
「大衆文芸」の編集人の平野周(ひらのしゅう)さんは、2010年に「沼田又太郎の決意」「惣領の剣」で第40回池内祥三文学奨励賞受賞されました。
同年の第47回長谷川伸賞の受賞者が西村京太郎さんで、新鷹会の主催した表彰式で同じひな壇に並んだそうです。
平野さんは、歴史小説『悍馬、室町を駆ける』(文芸社)などの著作があるほか、「歴史行路」で頼迅庵(らいじんあん)のペンネームで、新書や専門書で刊行された歴史書の書評を掲載されています。
また、2024年5月に、Amazonのペーパーバックで、室町時代を舞台にした『百王伝説: 小説『野馬台詩』』を刊行されました。
■今回ご紹介した本