『徳川時代の古都 知られざる都市の栄枯盛衰』|安藤優一郎|潮新書
歴史家、安藤優一郎さんの歴史読み物、『徳川時代の古都 知られざる都市の栄枯盛衰』(潮新書)をご恵贈いただきました。
本書は、日本史の分岐点となった戦国時代以来の歴史を持つ都市を古都と定義し、16の年について、その歴史を辿り考察する、歴史解説書です。
日本の歴史とは、年の興亡史である――
我々が学んだのは、時の政権が治める“首都”の歴史。その裏にある各都市固有の歴史文化を知ることで、はじめて「日本史」は完成する…!(本書カバー帯の紹介文より)
本書は、首都、城下町、商人町、港町、門前町など全国16都市の歴史を追うという切り口で、日本の歴史を俯瞰するスタイルで記述されていきます。
扱う都市は、京都、奈良、鎌倉、江戸といったかつて都のあった古都から、金沢や山口といった小京都と呼ばれる都市、仙台や名古屋、広島など城下町、神戸や博多、那覇といった港町といった多彩です。
将軍のお膝元の歴史を持つ鎌倉が現代に繋がる観光都市に変身したのは、江戸時代に入ってからだった。それまでの歴史の重み、寺社や旅籠屋の営業努力、立地環境の良さ、由緒ある寺社の集中などの要因が背景として指摘できるのである。
(『徳川時代の古都 知られざる都市の栄枯盛衰』P.54より)
たとえば、「鎌倉」の章では、かつて鎌倉幕府が置かれた鎌倉は、戦国時代以降、北条氏の居城である小田原に関東の中心が移ったことで、人口が減少し街は急速に寂れていったと。そして、徳川三代将軍家光の時代には、鎌倉五山第一の建長寺には住む人がなく、夜は狐狸のすみかとなっていたという記録が残っています。
ところが、江戸中期以降、江戸出開帳などの寺社の営業活動や旅籠屋のPRによって、観光都市として再生したという、著者の示唆が面白かったです。
歴史教科書には書かれていない意外な事実にも触れられていて興味深い内容となっています。
徳川時代の古都 知られざる都市の栄枯盛衰
安藤優一郎
潮出版社 潮新書
2023年8月20日 第1刷発行
装幀:Malpu Design(清水良洋)
本文:Malpu Design(佐野佳子)
●目次
はじめに
京都 | 戦乱で何度も焼け野原となった首都
奈良 | 天皇が去った都のその後
鎌倉 | 鎌倉幕府滅亡後のすがた
江戸 | 豊臣秀吉により関東の中心と定められた
仙台 | 傷心の伊達政宗が造った杜の都
金沢 | 日本最大の小京都
静岡 | 徳川家康のお膝元となった今川氏の小京都
名古屋 | 将軍のライバル尾張徳川家の城下町
大阪 | 織田信長の居城になるはずだった天下の台所
神戸 | 平清盛が遷都した福原京があった
広島 | 干拓で中国地方最大の都市となる
山口 | 小京都から明治維新源流の地となる
高知 | 卓越した治水技術が生んだ都市
博多 | 古代より日本の玄関口だった貿易都市
長崎 | 西洋と東洋が融合した異国情緒の都市
那覇 | 琉球王国の貿易港として繁栄した
参考文献
本文243ページ
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『徳川時代の古都 知られざる都市の栄枯盛衰』(安藤優一郎・潮新書)