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将軍から鬼平、宮本武蔵、團十郎まで、江戸の給与明細を公開

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『江戸の給与明細』|安藤優一郎監修|MdN新書

江戸の給与明細歴史家の安藤優一郎さんの監修による歴史読み物、『江戸の給与明細』(MdN新書)を紹介します。

江戸時代の一両は現在の貨幣価値として、いくらになるのでしょうか?
実は一口で答えるのはとても難しいです。
米やそば、大工の手間賃など、何を基準にして比較するかで、4万円~40万円まで大きく異なるからです。
本書では、その中間の十数万円が妥当と考えて、一杯のそばの値段を基準に1両=1石=12万円と設定しています。

将軍から庶民までのお金発見!
時代劇や歴史小説に出てくる江戸の人たちは、どのくらい給料をもらっていたか。米や食べ物の値段を手がかりに現代の日本円に換算した。
町奉行の大岡越前は出世を続け年収は増えたものの借金もかさみ、
火付盗賊改長官の鬼平こと長谷川平蔵は相場に手を出した。
副業をしなくては生きていけない御家人、
吉原遊郭で数百億円を散在する商人たち……。
武士と庶民のお金にまつわる生々しい生きざまが見えてくる。

(『江戸の給与明細』カバー帯の説明文より)

本書では、江戸の金にまつわるさまざまなこと、江戸の給与明細を、五つの切り口から迫まり解き明かしています。

第一章では、将軍・大名を頂点とする武士階級の給与明細を取り上げ、第二章では、江戸を代表する著名人の給与明細に焦点を当てています。

たとえば、斬首刑の執行人を務めた、人斬り浅右衛門の給与明細について触れられています。

 さて、斬首の代行料金は一両一分(十五万円)が相場であったらしいが、生実藩(千葉県千葉市)が依頼した時は三両二分(四十二万円)に加えて、生実までの旅費が支給された。また、切腹の介錯も請け負うこともあった。人の命を絶つ業の深い仕事をして、十五万円は安い値かもしれない。

(『江戸の給与明細』P.93より)

浅右衛門は、御様御用という新刀の試し斬りを務めたり、刀の鑑定も行い鑑定料を取っていたりで副収入もあったものと思われます。

また、斬った罪人は浅右衛門に払い下げられたことから、骸から肝を取り出して調合した秘伝の薬を金二分(六万円)で販売していました。こちらの収入もあり、内実は裕福でした。

第三章では、幕府や藩が財政難を克服するために駆使した財テクに注目し、第四章では江戸の経済を動かしていた豪商が財を成すに至ったテクニックを解き明かします。
そして、第五章では、庶民も商才を生かして収入を増やした姿に光を当てます。

本書を読むことで、江戸の金銭感覚が身につき、時代劇を見たり、時代小説を読んだりすると、現実感をもって江戸の世界がより理解できること請け合いです。
江戸の社会経済を知る手引きとしても、本書は役立ちます。

江戸の給与明細

安藤優一郎監修
MdN新書
2022年12月11日初版第1刷発行

装丁・レイアウト:小林しおり
カバー:慶長江戸絵図(部分) 東京都立中央図書館所蔵

●目次
はじめに
第一章 江戸時代人のお金事情
(一)将軍家のお金事情 初代家康~三代家光
(二)将軍家のお金事情 四代家綱~五代綱吉
(三)将軍家のお金事情 六代家宣~八代吉宗
(四)将軍家のお金事情 九代家重~十二代家慶
(五)将軍家のお金事情 十三代家定~十五代慶喜
(六)御三卿のお金事情 
(七)大名のお金事情 
(八)陪臣(大名家臣)のお金事情 
(九)公家のお金事情
(十)幕臣のお金事情
(十一)大奥のお金事情
(十二)商人のお金事情
(十三)庶民のお金事情
コラム 隠居料 隠居後の遊びが財政を悪化させる
第二章 有名人の給与明細
(一)長谷川平蔵の給与明細
(二)徳川光圀の給与明細
(三)大岡越前の給与明細
(四)宮本武蔵の給与明細
(五)大石内蔵助の給与明細
(六)市川團十郎の給与明細
(七)十返舎一九の給与明細 
(八)曲亭馬琴の給与明細
(九)中村主水の給与明細
(十)銭形平次の給与明細
(十一)人斬り浅右衛門の給与明細
(十二)春日局の給与明細
(十三)赤ひげの給与明細
(十四)徳川慶喜の給与明細
(十五)座頭市の給与明細
(十六)与謝蕪村の給与明細
(十七)新選組の給与明細
コラム 化粧料 大名領を凌駕する結婚祝い
第三章 武家の財テク
(一)新田開発
(二)専売制度
(三)特産物
(四)藩札
(五)贋金づくり
(六)改鋳
(七)内職
(八)借金の踏み倒し
コラム 万石事件 大名になるために石高を虚偽報告
第四章 才能ある商人
(一)「越後屋」の型破りな商い
(二)みかんでお大尽になった「紀伊国屋」
(三)江戸の「ゼネコン」河村瑞賢
(四)百億を没収された「淀屋」
(五)武人から商人になった「鴻池」
(六)巨万の富を使い果たした「奈良屋」
(七)武士より強くなった高利貸
(八)志士のパトロン「大浦慶」
コラム 幕府の埋蔵金 小栗上野介の行動が伝説を生む
第五章 庶民の商才
(一)現金収入が博徒を生んだ?
(二)「ブランド野菜」でガッチリ
(三)奉公人出世すごろく
(四)俳諧師の旅事情
(五)仕事が山積する「大家」の一日
コラム 江戸の華 遊女が借金地獄から脱出する奥の手
おわりに
参考文献

本文191ページ

書き下ろし

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『江戸の給与明細』(安藤優一郎監修・MdN新書)

安藤優一郎|著作ガイド
安藤優一郎|あんどうゆういちろう|歴史家 1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士。 早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学。 主に江戸をテーマとして執筆・講演活動を展開。 ■時代小説SHOW 投稿記事 『30の神...