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黄巾の乱の鎮圧に向かうに曹操。袁紹、董卓、孫権らも登場

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『曹操 卑劣なる聖人 二』|王暁磊・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳|曹操社発行・はる書房発売

曹操 卑劣なる聖人 二中国の作家、王暁磊(おうぎょうらい)さんの歴史小説、『曹操 卑劣なる聖人 二』(曹操社発行・はる書房発売)を紹介します。

本書は、中国在住の歴史作家の王暁磊(おう・ぎょうらい)さんによって書かれた、曹操を主人公とした三国志小説の第2巻です。
全10巻からなるシリーズで、中国大陸ではシリーズ累計300万部を突破しているとそうです。
(日本では2021年7月時点で、第5巻まで刊行されています)

第2巻では、いよいよ黄巾の乱が勃発。曹操は血みどろの戦を繰り広げて鎮圧、昇進して貪官汚吏の粛清に辣腕を振るうも、霊帝と宦官の無法に嫌気が差して致仕。典軍校尉として官職に復帰したところで、大将軍の何進は暗殺され、都に呼び寄せた董卓が朝廷に牙をむいてくる。曹操の26歳から34歳までを描く。袁紹、蹇碩、董卓はもちろん、曹嵩、卞氏、朱儁、袁隗らが登場する。
(Amazon紹介文より)

後漢の霊帝劉宏の光和三年(180)二十六歳の曹操は、古典に通暁していることから、儀郎の職で、再び朝廷に出仕することとなりました。

儀郎とは、皇帝の諮詢に対して意見を述べる顧問のような職ですが、何の実権も持っていません。しかも、朝廷内の儀郎は掃いて捨てるほど多く、何もやることのない閑職でした。

しかも、皇帝劉宏は、忠臣の諫言を聞き入れず、道楽の限りを尽くし、享楽にふけってました。朝廷では、「十常侍(じゅうじょうじ)」と呼ばれる12人の宦官が霊帝からの寵愛を恃みに、権力を握り、財をむさぼり、賂を受けて官職や爵位を売り出し、民を苦しめていました。

郡県以下の官職を金で買った者は、元手を回収するために税をみだりに上げて、民から厳しく取り立てました。

こうした状況の中、多くの民が太平道に身を投じ、大賢良師張角に従って天下を巡り教えを広めていきました。

光和七年二月。朝廷で緊急の朝議や変事の出来の際に打ち鳴らされる、玉堂殿の鐘の音が響いてきました。曹操は、父の曹嵩の後を追って急ぎ出仕しました。

「諸官に告ぐ」劉宏は立ち上がった。「こたびは朝議ではない。重大な事案が発生した。今宵、禁中に密報が入った。太平道が兵馬を揃え、その数は百万を下らないらしい。それが来月五日に決起するというのだ」この知らせに殿内は騒然とした。

(『曹操 卑劣なる聖人 二』P.98より)

黄巾の乱の幕が切って落とされました。

劉宏は、都の洛陽に差し迫っている逆賊を討伐するように詔を伝え、洛陽の十二の門を厳重に警備し、京畿の八関の守りを固めて敵に備えるように命じました。

河北で反乱の火蓋が切られると、わずかひと月の間に、天下のいたるところで民衆が頃に応じて立ち上がり、瞬く間に百万人以上に膨れ上がりました。

黄色い布を頭に巻いた太平道の教徒のほか、災害によって土地を離れた流民、厳しい税の取り立てから逃げる民、連年の戦から逃げ出した兵士、土地を失い虐げられてきた小作農、さらには盗賊や朝廷に不満を抱く土豪らも、民衆の血気に参加しました。

こうした者たちが一緒になって、各地の県城や役所を襲い、官吏や貴顕の者を殺害したのでした。

情勢が日を追って悪化する中で、曹操は、父・曹嵩に戦に出たいと訴えました。

「要するに、さまざまな期待と責任がそなたの肩にかかっているということだ。命を受諾するからには、即刻そなたを騎都尉に任命する。明日にも都亭に行って大将軍にまみえ、軍を率いて関所を出るのじゃ」
「ははっ」曹操は立ち上がって拝礼すると、大きなよく通る声で宣言した。「不才、御命を奉じた以上、必ずやお国に忠を尽くし、たとえ死すとも本望でございます」
「やる前から死などと申すでない」鄧盛は令史が持ってきた印綬を受け取ると、自ら曹操の手に握らせた。「若者よ、老いぼれはここで静かに吉報を待っておるぞ」

(『曹操 卑劣なる聖人 二』P.138より)

曹操は、武人として、黄巾の乱の渦中に飛び込みました……。

第二巻で、二十六歳から三十四歳までの曹操が描かれています。黄巾賊を相手に縦横無尽の活躍をして英傑の片鱗を見せる一方で、兵権争奪に心身ともに疲れた末の、若者らしい言動や心情も細やかに描かれています。

本巻では、袁紹や董卓、孫権など、三国志の重要なキャラクターも登場し始め、いよいよ三国志の世界が始まる、第三巻への格好の導入となっています。

多種多様な登場人物と古代中国独特の官職や政治制度を描きながら、『詩経』をはじめ、漢文の書き下し文を時折交えて、格調高い文体で物語が綴られていくので、本巻も550ページを超える読みごたえが十分な大長編となっています。

「三国志」に詳しくない私でも飛び切り面白く感じたので、「三国志」通なら数倍楽しく読めることと思います。

曹操 卑劣なる聖人 二

王暁磊
後藤裕也監訳・岡本悠馬訳
曹操社発行・はる書房発売
2020年1月31日初版第1刷発行

装丁者:大谷昌稔
装画者:菊馳さしみ

●目次
第一章 新たな宮廷闘争
第二章 曹操の目に映る天下
第三章 黄巾の乱の幕開け
第四章 百万人の大造反
第五章 一夜にして将となる
第六章 前線へ、黄巾の乱を鎮圧せよ
第七章 済南の相に昇進、貪官を罷免する
第八章 落胆、官を棄てる
第九章 隠棲の日々
第十章 曹嵩、一億銭で官をあがなう
第十一章 面目を失い、三度目の出仕
第十二章 兵権争奪の渦中へ
第十三章 顕臣を引きずり下ろす
第十四章 霊帝劉宏の亡きあと
第十五章 袁紹の愚策と董卓の上洛
第十六章 皇宮の大虐殺

主な登場人物
主な官職
後漢時代の地図
後漢時代の司隷の地図/後漢時代の冀州、青州、えん(「大」の下に「兄」の字)州、豫州、徐州の地図
本文558ページ

Wang Xiaolei “Beibi de shengren: Cao cao di 2 juan” (C)Shanghai dookbook publish company, 2011

■Amazon.co.jp
『曹操 卑劣なる聖人 一』(王暁磊・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳・曹操社発行・はる書房発売)
『曹操 卑劣なる聖人 二』(王暁磊・後藤裕也監訳・岡本悠馬訳・曹操社発行・はる書房発売)

王暁磊|時代小説ガイド
王暁磊|おうぎょうらい|歴史作家 中国在住。歴史作家。著書にはほかに『武則天』(全6巻)がある。 時代小説SHOW 投稿記事 →王暁磊の本(Amazonより) ⇒時代小説作家リストへ戻る