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お客様相談室へのクレームは、七夕のコスプレ衣装を取り戻せ

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『刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜』|鳴神響一|小学館文庫

刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜』(小学館文庫)をご恵贈いただきました。

神奈川県警で、「県警お客さま相談係」とも呼ばれる「刑事特別捜査隊第四班」に所属する巡査部長・伊達政鷹が活躍する、警察小説シリーズ第2弾です。

刑事特別捜査隊第四班は、苦情申立人の話を聞いて、捜査が必要だと判断した事案を、独自に捜査をするという班で、実際は事件性がないとして最初から県警が取り上げなかった事件だけを扱っています。

「お客様相談室」と揶揄される、神奈川県警刑事特捜隊所属の小笠原亜澄巡査長に相談を持ち込んだのは、「所轄署の捜査が進まない」と訴える長束と名乗る男。コスプレ衣装が盗まれたので、湘南ひらつか七夕まつりの織姫コンテストに間に合うよう、取り戻してほしいと言う。出場する、勤め先の社長令嬢に着せないと、首が危ないらしいのだ。まつりまで二週間ほどしかない中、伝説のメーカーが作った衣装を見つけられるのか? 元捜査一課のエース刑事・伊達政鷹と組み、捜査を開始する亜澄だったが、胸によぎる不安が現実となり、思いも寄らぬ事件が起こる。

(『刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜』カバー裏の紹介文より)

梅雨まっただ中の火曜日、午前八時三十分、亜澄が担当する相談者は、長束と名乗る三十前くらいの中背細身ですきっとした目鼻立ちの優男でした。

相談は、平塚中央署に盗難の被害届を出していたが、捜査が何も行われていないことで苦情を言いに来たと。
盗まれたものは、勤務先の社長令嬢の岡部絵理沙が湘南ひらつか七夕まつりに使う予定のコスプレ衣装で、七夕まつりで行われる「織姫コンテスト」までに取り戻してほしいと訴えました。

「あの衣装が七月五日の日曜日の昼までに戻ってこないと、俺ヤバいんです」
 長束は身体をぶるっと震わせた。
「はぁ……管理責任をとらされるんですね」
「そうです。指……あ、いや、首が危ないんです」

(『刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜』P.18より)

盗まれた衣装は、お嬢さんの亡くなった母親の形見の真珠を散らした、製作費数十万円を超える高価なもので、代わりのきかない大切な品だと言います。
おまけに、伝説のコスプレ・メーカー、カツラ・カツラヒの製作したもので、再オーダーをしても最低でも半年以上は待たなければならないと。

平塚で三代続く呉服屋に生まれ、大人になって家を出た亜澄にとって、七夕まつりはなじみ深いイベントでしたが、嫌な予感がこころをよぎりました。

第四班では、亜澄が担当した事案を独自に捜査をすべきと決めて、政鷹と亜澄が捜査を開始しました。

平塚中央署に盗難事件の照会をすると、長束の勤務先の会社が、実は暴力団のフロント企業であることが判明しました。
長束は、指定暴力団の三次団体、平塚岡部組の若頭で、社長令嬢の岡部絵理沙は組長の娘だと。

七夕まつりまで二週間と残された時間が限られている中で、盗まれたコスプレ衣装を見つけることができるのかというスリリングな展開が魅力。

「織姫コンテスト」がアイドルの登竜門となっていることで、絵理沙をはじめ、コンテストでの優勝を目指す若者たちの今が活写されています。

地元の平塚を舞台に、複雑な思いを抱きながらも、捜査を進める亜澄からも目が離せない、注目のシリーズ第二弾です。

刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜

鳴神響一
小学館 小学館文庫
2021年4月11日初版第一刷発行

カバーフォト:Stijn Dijkstra/EyeEm/Getty Images
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)

●目次
第一章 亜澄のお客さま
第二章 捜査開始
第三章 カツラ・カツラヒ
第四章 星たちの輝き

本文364ページ

文庫書き下ろし

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『刑事特捜隊「お客さま」相談係 伊達政鷹』(鳴神響一・小学館文庫)
『刑事特捜隊 伊達政鷹2 織姫の夜』(鳴神響一・小学館文庫)

鳴神響一|作品ガイド
鳴神響一|なるかみきょういち|時代小説・作家 1962年、東京都生まれ。中央大学法学部卒。 2014年、『私が愛したサムライの娘』で第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。 2015年、同作品で第3回野村胡堂文学賞を受賞。 ■時代小説SHO...