『若さま同心徳川竜之助(一) 消えた十手』|風野真知雄|双葉文庫
風野真知雄さんの痛快ユーモア捕物小説、『若さま同心徳川竜之助(一) 消えた十手』(双葉文庫)をご恵贈いただきました。
本書は、2007年9月に刊行された同名時代小説シリーズの新装版第1巻です。スカイエマさんのイラストレーションによる、徳川竜之助の表紙が都会的でクールで、読書欲をくすぐります。
御三卿・田安徳川家の十一男で変わりものと評判の徳川竜之助。市井の人々の生活に触れ、磨いた剣の腕で悪を成敗したいとの思いを持つ竜之助は、南町奉行の小栗忠順の力添えで定町廻り同心見習いとなることに、若さま育ちゆえの常識知らずでいつも周囲をはらはらさせながらも、様々な事件を颯爽と解決していく“若さま同心”剣戟あり、人情あり、ユーモアもたっぷりの傑作時代小説シリーズ新装版、第一弾。
(カバー裏の内容紹介より)
主人公の徳川竜之助竜英は、御三卿・田安徳川家の十一男。母親の身分があまりに低かったこともあって、忘れられた存在ではありましたが、若さまとして、田安家の屋敷で気ままに外に出られない窮屈な生活を送っていました。
竜之助は、田安家の用人・支倉辰右衛門に、武者修行の旅に出ると脅し、南町奉行所の同心となれるよう、遠縁の南町奉行の小栗豊後守忠順に依頼することを認めさせました。
「それほどまで旅に出したくないのなら、奉行所の同心にわたしを推挙しろ」
「同心に?」
「そう、同心だ。与力では駄目だぞ」
武者修行と並んで、奉行所の同心というのも、昔からの憧れだった。
市井の人々と接し、磨いた剣の腕で、この世の悪を懲らしめたい」(『若さま同心徳川竜之助(一) 消えた十手』「第一章 妻恋坂」P.11より)
勘定奉行を兼任する幕府きっての能吏である忠順は、竜之助を同心に就けることを認め、職務上は「福川竜之助」と名乗るように命じました。
田安屋敷を出て、八丁堀にある同心の役宅での暮らしを始めた竜之助ですが……。
若さま竜之助の常識知らずのギャップが面白く、とんちんかんな対応ぶりで周囲の者たちをハラハラさせます。また、用人で竜之助の世話役兼教育係である、支倉辰右衛門とのやり取りも、掛け合い漫才のようでクスッとさせられます。
同名の時代小説シリーズは全13巻刊行されていて、その後、続編の「新・若さま同心 徳川竜之助」シリーズが3巻まで出ています。
古き良き捕物小説の世界に、今どきの読者向けにスピード感とユーモアを加えた、「風野ワールド」が楽しめます。
若さま同心徳川竜之助(一) 消えた十手〈新装版〉
風野真知雄
双葉社 双葉文庫
2020年11月15日第1刷発行
カバーデザイン:泉沢光雄
カバーイラストレーション:スカイエマ
●目次
第一章 妻恋坂
第二章 弓ひき童子
第三章 盗まれた十手
第四章 神の鹿
本文276ページ
『若さま同心徳川竜之助(一) 消えた十手』(双葉文庫・2007年9月刊行)の新装版
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『若さま同心徳川竜之助(一) 消えた十手』(風野真知雄・双葉文庫)