『写楽』
皆川博子さんの長編時代小説、『写楽』(角川文庫)を入手しました。
謎に満ちた浮世絵師・東洲斎写楽を描く時代小説には、杉本章子さんの『写楽まぼろし』、泡坂妻夫さんの『写楽百面相』など、復刊してほしい、優れた作品が少なくありません。
寛政5年、江戸。人気絵師・歌麿に去られ、血眼で新しい才能を探す蔦屋重三郎は、ふと目にした絵に驚愕する。斬新な魅力と力強さに溢れた役者絵……描いた者は、元稲荷町役者の“とんぼ”と名乗る男だった。蔦屋が考えた雅号は、〈江戸の男の心意気〉を表わす、東洲斎写楽――。歌麿の最大のライバルと言われ、型破りな名作を次々世に送り出し、忽然と姿を消した写楽。その魂を削る凄まじい生きざまと業を描きあげた、心震える物語。
(本書カバー裏紹介より)
本書は、1986年に時代小説『恋紅』で95回直木賞を受賞し、ミステリー、幻想小説、歴史時代小説と幅広い分野で活躍するレジェンド的な存在、皆川博子さんの、1994年に刊行した単行本を文庫化したものです。
四半世紀以上を経ての初の文庫化の経緯については、著者の文庫化されていない単行本を復活させるプロジェクトを進めている、ミステリ研究家でフリー編集者の日下三蔵さんが解説で触れられています。
単行本版あとがきと併せて読みますと、刊行に至る波乱万丈の物語があって、感慨もひとしおです。
「写楽の映画をつくろうとしてる。監督は篠田正浩さん。主演はフランキー堺さん。皆川さんにはシナリオを描いてほしい」
と、いうお誘いでした。(『写楽』 単行本版あとがき 映画『写楽』と小説『写楽』 P.276より)
平成4年(1992年)8月に、小説家の著者に映画『写楽』のシナリオ執筆の依頼がありました。映画『写楽』は1995年2月に公開されました。(残念ながら見逃しているので、DVDで観たいと思います。)
本書は、映画のノベライズでも、シナリオでもなく、小説として書き込み、彫り込んだ作品です。
前置きが長くなましたが、肝心の小説の紹介は、後日、あらためて書きたいと思います。
写楽
皆川博子
祥伝社 角川文庫
2020年5月20日初版第1刷発行
単行本『写楽』(1994年12月、角川書店刊)を加筆修正して文庫化したもの。
カバーイラスト:伊豫田晃一
カバーデザイン:大武尚貴
●目次
写楽
単行本版あとがき
解説・日下三蔵
本文291ージ
■Amazon.co.jp
『写楽』(皆川博子・角川文庫)
『写楽まぼろし』(杉本章子・文春文庫)
『写楽百面相』(泡坂妻夫・新潮文庫)
『写楽 Sharaku』[DVD](篠田正浩監督・東宝)