『黒王妃』
佐藤賢一さんの長編西洋歴史小説、『黒王妃(くろおうひ)』(集英社文庫)を入手しました。
黒衣を好んだことから、「黒王妃(くろおうひ)」、ラ・レーヌ・ノワールと呼ばれた、16世紀半ばにフランス王妃となった、カトリーヌ・ドゥ・メディシスの素顔に迫る長編歴史小説です。
ルネサンス期、フィレンツェで生まれたカトリーヌ・ドゥ・メディシス。政略結婚でフランス王家に入り、やがて王妃となるも、夫アンリ二世の心は愛妾ディアーヌにあり、宮廷では平民の出と蔑まれる。だが、カトリーヌは料理や服、化粧品などに卓越したセンスを発揮し、宮廷での地位を上げていく。そして、遂に権力の頂点に君臨するが……。現代に続くファッションの礎を築いた王妃の素顔に迫る長編。
(本書カバー裏紹介より)
メディシスはイタリア語読みでは、メディチとなります。
そう、彼女はフィレンツェの大富豪で実力者のメディチ家の出身です。
1533年にフランソワ一世の第二王子オルレアン公アンリ(後の国王アンリ二世)に嫁ぎました。
知ってます? マリー・ステュアールなんかも大喜びしているフランスの文化、その半分は熱心に人を呼んだフランソワ一世陛下の手柄です。けれど、残りの半分は私カトリーヌ・ドゥ・メディシスが、嫁入りと一緒に持参してきたものなんですよ。
野蛮とか、文化的とかいいますけれど、なにせフランスの女ときたら、私が嫁いでくるまで「野蛮なところ」を隠す術も知らなかったわけですからね。(『黒王妃』P.55より)
先年夫でフランス王アンリ二世が崩御し、カトリーヌの子・フランソワ二世が王位に就きました。スコットランド女王で、フランソワ二世に嫁いでいたマリー・ステュアール(メアリー・スチュアート)が王妃となりました。
最悪ともいうべき、カトリーヌとマリーの嫁姑の関係が、カトリーヌの独白を通じて明らかになっていきます。
1560年、フランス国内では、カルヴァン主義のプロテスタントである新教徒(ユグノー)の反乱と弾圧が繰り広げられていました。動乱の中で、カトリーヌ・ドゥ・メディシスの物語は始まります。
普段は、日本の江戸時代や戦国時代を主とした、歴史時代小説を集中的に読んでいますが、時折、気分転換をしたくなることがあり、そんなときに手を伸ばすのが著者の一連の西洋歴史小説です。
高校以来世界史から離れていて史実に明るくなく、カタカナの名前を覚えるのも苦手ですが、著者の作品に流れる、ヨーロッパ史のダイナミズムとロマンに浸れるのが至上の楽しみです。
黒王妃
佐藤賢一
集英社 集英社文庫
2020年5月25日第1刷
単行本『黒王妃』(2012年12月、講談社刊)を文庫化したもの
カバーデザイン:アルビレオ
イラストレーション:浅野勝美
●目次
主要登場人物
家系図
1 占いは気になる
2 そう簡単な話じゃない
3 あまりに野蛮で
4 コンデでございます
5 知っておられたのではないのですか
6 できるだろう、おまえのような女なら
7 大袈裟にする気はありませn
8 是が非でも
9 今に始まった話じゃありません
10 滑稽でございますな
11 許容の範囲を超えています
12 ここを動きませんからね
13 またギーズ公か
14 ルーアンだけは
15 アンボワーズとは奇縁ですね
16 目にものみせてあげましょう
17 この河の畔には
18 なかに仕掛けられたカラクリというのが
19 もうすっかりスペイン人
20 男の風上にも置けません
21 こんな女のような奴が
22 どこもかしこもアンリばかり
23 おまえのような娘が
24 縁談は進めさせていただきますよ
25 父上の話を、なんと
26 イタリアの女ですものね
27 今なら多少の物音くらい
28 これも神の配剤でございましょうぞ
29 怖いのですね
30 血なんか珍しいものじゃありません
解説 現代に生きるカトリーヌ・ドゥ・メディシスの遺産 中野香織
本文525ージ
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『黒王妃』(佐藤賢一・集英社文庫)