『秀吉の活』
木下昌輝さんの長編歴史時代小説、『秀吉の活』(幻冬舎時代小説文庫)を入手しました。
昨今は、就活、婚活、妊活から終活まで、「○活」ばやりですが、本書では、豊臣秀吉の生涯を十の時期に分けて、「○活」というキーワードで描いていく、新しい視点で描かれた『太閤記』です。
織田信長への仕官を目指した就活、伴侶を求めた婚活、合戦で頭角を現すための勤活、天下取りに名乗りを上げた天活、跡取りづくりの妊活……。乱世を駆け昇った豊臣秀吉は人生の分岐点に立った時、いかに懊悩し、どう決断したのか。その波瀾に満ちた生涯を「活」という一語を軸に十の時期に分け、これまでにない切り口で秀吉を描いた新たな『太閤記』。
(本書カバー裏紹介より)
秀吉を描く歴史時代小説は少なくありませんが、貧しい農家に生まれ、位人臣を極め太閤となった、おとぎ話のような、その波瀾に満ちた生涯を描いた作品は多くはありません。
昭和を代表する巨星、吉川英治さんの『新書太閤記』や司馬遼太郎さんの『新史 太閤記』という、国民に愛された、先行作品があるせいかもしれません。
本書の序章で、日吉(幼い頃の秀吉)は、父・弥右衛門から、同じ“いきる”でも全然違うと言いました。そして、たくさん考えて、他人に気配りして、一生懸命に働くことを「活きる」と教えました。
「生きるではなく、活きるでないとならん」
父は、しゃがみこんだ。それでもまだ日吉よりも体は大きい。節くれだった指を、大地にやる。そして、「生」と「活」と書いてみせた。
「おっとう、字ぃ書けるのか」
「このふたつと弥右衛門の名前だけは、寺の和尚に教えてもらった」
微苦笑を零しつつ、日吉の頭を撫でてくれた。(『秀吉の活』P.8より)
本書は、平成から令和の時代に生きる現代人を読者に、天下人・秀吉の成り上がり人生を描いた作品です。
600ページを超える大長編ながら、新しい切り口で秀吉の素顔を描き、読み始めたら途中で止められない、仕掛けがあり、面白さが詰まっています。
究極の競争社会である戦国時代に、「活きる」にこだわり、「○活」に取り組んだ秀吉が、天下人になれたのは、途方も無い運に恵まれたばかりではないように思います。
秀吉の活
木下昌輝
幻冬舎 幻冬舎時代小説文庫
2020年6月15日初版発行
単行本『秀吉の活』(2017年11月、幻冬舎刊)を文庫化したもの
カバーデザイン&イラスト:遠藤拓人
●目次
序章
第一章 天下人の就活
第二章 天下人の婚活
第三章 天下人の昇活
第四章 天下人の凡活
第五章 天下人の勤活
第六章 天下人の転活
第七章 天下人の天活
第八章 天下人の朝活
第九章 天下人の妊活
第十章 天下人の終活
解説 細谷正充
本文612ージ
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『秀吉の活』(木下昌輝・幻冬舎時代小説文庫)
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『新史 太閤記(上)』(司馬遼太郎・新潮文庫)