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愛すべきアウトロー河内山宗俊は、難事件を解決する名探偵

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『河内山宗俊懐中思案(上)』

河内山宗俊懐中思案(上)島田一男(しまだかずお)さんの捕物小説、『河内山宗俊懐中思案(上)』オンデマンド本を献本いただきました。

本書は、歌舞伎『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』の主人公で、アウトローとして知られる、河内山宗俊(こうちやまそうしゅん)を探偵役とした、短編形式による捕物小説です。

著者は、1907年生まれで、新聞記者を経て、新聞記者ものの推理小説で活躍され、山田風太郎、高木彬光、香山滋、大坪砂男とともに「探偵小説界の戦後派五人男」と呼ばれました。

時代小説では、テレビ時代劇「江戸の旋風」の原作となった『同心部屋御用帳』シリーズなどの著作があります。

昭和26年より5年間にわたって執筆された島田一男の捕物小説。河内山宗俊と片岡直次郎の組合せを踏襲しつつ、河内山宗俊の名推理によって事件を解決する痛快な捕物小説に仕上げられている。
従来の代表的な単行本であった「闇の顔役(全)」(桃源社、春陽文庫)に未収録の5編を加えた24編を上下巻に収録。
(Amazonの内容紹介より)

河内山宗俊は、講談「天保六花撰」では、茶事や茶器の管理を行う御数寄屋坊主をつとめ、その傍ら、素行の悪い御家人・片岡直次郎(直侍)と組んで、脅迫して金品を強請り取るような悪事を重ねる、侠気あふれるアウトローとして、知られています。

本書では、宗俊は直侍と組んで、お金の臭いのする事件に首を突っ込んで解決していきます。

「おや、練塀町の旦那でござんしたね……」
「宗俊だよ。左の高頬のデケエほくろが金看板だ……。相棒は大根畑の御家人直次郎――。腕は弱えが、当時お江戸一番の色男さ」
「ウフフ……、兄貴、それほどでもねェ……」
 直侍、柄にもなくテレている。

(『河内山宗俊懐中思案(上)』「判じ三味線」P.4より)

妻恋坂の質屋から金を借りようとした宗俊と直侍は、御用聞き明神下の金助が質屋の番頭を尋問しているところに遭遇します。

湯島の御祭礼で踊りや清元を披露するために、男禁制にしていた質屋の離れで、妾・お駒が半裸で殺される事件が起こりました。小刀で刺されたお駒は、二間余りもはいずり回って床の間の三味線の裏胴に象牙の撥をプッツリ突き立てたと。

その行動は、果たして下手人を知らせる、ダイイングメッセージなのか?

悪事を重ねながらも、人情味と侠気がある、宗俊の推理が光ります。

ところで、宗俊の住まいがある練塀町は下谷練塀小路とも呼ばれます。直侍の住んでいる「大根畑」とはどこにあるのか気になって、「江戸明治東京重ね地図」で調べてみました。
俚俗「大根畑」は、春日局の菩提寺である麟祥院近くにある、湯島切通片町(現在の湯島四丁目辺り)に見つかりました。

本書は、オンデマンド本として刊行されています。

オンデマンド本とは、注文に応じて印刷・発行する「プリント・オン・デマンド」方式の本のことです。一般の書店には並んでいませんが、Amazonや楽天ブックスなら通常の書籍と同様に送料無料で数日間で手許に配送されます。

神田神保町の三省堂書店本店には、オンデマンド印刷製本機が店内に設置されているので、注文から30分ほどで出来立てほやほやの本を入手できます。

河内山宗俊が活躍する「天保六花撰」の物語では、藤沢周平さんの『天保悪党伝』や半村良さんの『碑夜十郎 講談』もおすすめです。

河内山宗俊懐中思案(上)

島田一男
捕物出版
2020年6月20日 オンデマンド版初版発行

目次
判じ三味線
妻敵討ち
緋牡丹懺悔
三人後家
唇紅鉄砲
回春秘薬問屋
はだか弁天
男女道成寺
幽霊の風車
夢の船宿
祭文殺し顛末

本文269ページ

本書は、桃源社の『闇の顔役 全』(1980年7月刊)を底本に、同書に未収録の「判じ三味線」「祭文殺し顛末」を加えています。

捕物出版の単行本
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『河内山宗俊懐中思案(上)』オンデマンド本(島田一男・捕物出版)
『同心部屋御用帳(一)』(島田一男・コスミック・時代文庫)
『天保悪党伝』(藤沢周平・新潮文庫)

『碑夜十郎(上) 講談』(半村良・集英社文庫)

島田一男|時代小説ガイド
島田一男|しまだかずお|作家 1907年 - 1996年。京都府京都市出身。明治大学中退。 1946年、短編「殺人演出」が雑誌「宝石」の第1回短編懸賞に入選し、翌年掲載。 1951年、短編「社会部記者」(別題「午前零時の出獄」)、「風船魔」...