『長屋道場騒動記(七) 迷い熊繋ぐ』
芝村凉也(しばむらりょうや)さんの文庫書き下ろし時代小説、『長屋道場騒動記(七) 迷い熊繋ぐ』(双葉文庫)を入手しました。
“迷い熊”と呼ばれる、心優しき巨躯の剣術道場主、間野生馬が悪を討つ、痛快時代活劇シリーズの第7作です。
生馬と栄次郎たちの活躍で、三嶽藩によるお君拐かしの企ては無事阻止された。だが、逃走する際の藩士たちのやり取りを耳にしたお君は、自身の出自に対する疑念を抱き懊悩する。一方、間野道場を探させていたはずの自藩の水口が加わっての三嶽藩の暴挙を知り驚愕する十河藩御国派、計画の失敗により誤算が生じた御為派とともに、新たな策動を始める――。
心優しき巨躯の剣士「迷い熊」が悪を討つ! 痛快人情活劇シリーズ第七弾!!(カバー裏面の説明文より)
生馬と栄次郎らは、十河藩の水口連蔵を案内人に三嶽藩藩士たちによって襲撃されて、拐かされようとしたお君を助けました。水口をはじめ四人の男たちは捕らえらえて、水口を尋問して事件の経緯を知ることとなりました。
「では、はなしてもらおうか。そなたが入門志願を装って最初にここへ来るに至った経緯から全てをな」
「は、話せばご容赦くださるか」
水口は生馬に縋るような目を向けてくる。生馬はそれを突き放した。
「これだけのことをしておいて、無罪法㎡んとなるはずがなかろう――どのような扱いとするかは、そなたの話次第だ。ただ、中身はもとより、そなたがどれだけ我らの助けにになるかで、どうしてやろうかというこちらの心持ちも変わってき得るとだけは申しておこう」
(『長屋道場騒動記(七) 迷い熊繋ぐ』P.14より)
御国派と御為派の二派に分かれて、水面下で抗争を繰り広げる十河藩。水口の暴走により、内福な豊かな十河藩へ世継ぎを送り込んで援助を引き出そうと画策する、三嶽藩をも巻き込まれていきました……。
一方、菓子舗惠比壽屋の娘として育てられたお君は、自身の出生の秘密に近づき、悩み戸惑います。
もつれた事件は、生馬によって、いかにして解きほぐされていくのか、物語の行方が気になります。
さて、本書のカバーを取ってみて、表紙のフォーマットデザインが大きく変わったのに気が付きました。
表紙カバーの背の上部に入っている、文庫の管理コードを丸囲みしている部分の色も、テーマカラーのオレンジから白地に変わっていました。
双葉文庫といえば、南伸坊さんのイラストが入ったオレンジ一色の表紙がなじみ深いく、一目でわかるものでした。デザイナーは日下潤一さんと同じですが、目に優しい肌色の表紙で、人前でも目を引きにくいフォーマットデザインです。
長屋道場騒動記(七) 迷い熊繋ぐ
芝村凉也
双葉社 双葉文庫
2020年6月14日第1刷発行
文庫書き下ろし
カバーデザイン:長田年伸
カバーイラストレーション:森豊
●目次
第一章 宴の後
第二章 窮鼠の来訪
第三章 困惑と思惑
第四章 屈託
第五章 薄明
本文285ページ
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『長屋道場騒動記(七) 迷い熊繋ぐ』(芝村凉也・双葉文庫)(第7作)
『長屋道場騒動記(六) 迷い熊匿す』(芝村凉也・双葉文庫)(第6作)
『長屋道場騒動記(一) 迷い熊帰る』(芝村凉也・双葉文庫)(第1作)