『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記』
野口卓さんの時代小説書き下ろしシリーズ、『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記』(集英社文庫)を入手しました。
よろず相談屋と将棋会所を開いた信吾が痛快無比な活躍をする、青春痛快時代小説「よろず相談屋繁盛記」シリーズの第6作。
信吾の嫁に波乃を迎えて、始まる新展開が気になります。
よろず相談屋の信吾が結婚したって!? ああ、間違いない。十九歳で老舗料理屋の跡取りを弟に譲り独立。将棋会所と相談屋を開業した変わり者。武芸も達者で、刃物を持った相手を撃退し瓦版にも載った。そんな男の夢になるのはどんな女だ? それが信吾に負けず劣らずの変わり者らしい。そりゃ目が離せねぇな! 読み味は軽快! 知春時代小説、第二幕はじまり、はじまり~。
(カバー裏面の説明文より)
前作(『あっけらかん』)で、阿部川町の楽器商「春秋堂」の次女・波乃と仮祝言を挙げて、新しい生活を始めた信吾。
「竹輪の友」で幼馴染の完太と寿三郎、鶴吉が結婚の祝いと嫁の顔を見にやってきました。三人は、美人で江戸で知られた楽器商の娘で縁談が降るほどあると思われる波乃が、なんで信吾といっしょになったのか、興味津々です。
「あら、なぜでしょう。そんなに変かしら」
「変も変。だって信吾は浅草一と評判の高い老舗料理屋を弟に譲って、自分は将棋会所と相談屋を始めたんだぜ。気が変とまでは言わないけれど、どう考えたって、まともな男のやることじゃないもの」
困りましたね、とでも言いたげに波乃が信吾を見た。
(『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記』P.18より)
「子供のころから、ありきたりな人といっしょになって、ありきたりな一生を終えたくない」と思っていたという、波乃の話を聞いて、三人は嫁もそんじょそこらにいる人でないと気づきました。
「悩んだり迷ったりしている人は、世間にごまんといるはずです。新之助さんやお母さんの周りにも、そんな人はたくさんいると思いますよ。知りあいから悩みを打ち明けられたとき、だったら黒船町によろず相談屋があるから訪ねてみませんか、となります。あるじの信吾さんはまだ若いですが、かならず力になってくれますよって。その人たちが知りあいに、さらに知りあいにと、鼠算式にお客さんが増えて、門前市を成す、となるかもしれませんもの」
「わたしは気楽なやつだと言われているけれど、波乃はそれに輪を掛けてるな」
「かもしれません。だって破鍋に綴蓋の、似た者夫婦ですもの」
「ギャフン、してやられた」(『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記』P.76より)
よろず相談屋に、仕事の伝言が入りました。
商家の女主人とその長男らしい男女二人が、信吾を料理屋に呼び出し、母親は信吾のことが書かれた瓦版を読んでから息子が家業に身が入らなくなり、弟に家業を譲ると言い出したことを翻意させたい、という相談でした。一方の息子新之助は、厭でたまらぬ家業を弟に譲って自分はやりたいことをやる方法を教えてほしい、という相談でした。
さて、信吾は二人の相談を叶えることができるのでしょうか?
信吾と波乃のよろず相談屋の新展開に、ワクワクします。
気が付けば、「よろず相談屋繁盛記」から、「めおと相談屋奮闘記」にシリーズタイトルが変わり、シーズン2のスタートです。
なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記
野口卓
集英社 集英社文庫
2020年6月11日第1刷発行
文庫書き下ろし
カバーデザイン:亀谷哲也[PRESTO]
カバーイラストレーション:中川学
●目次
竹輪の友
操り人
そろいの箸
新しい看板
解説 細谷正充
本文271ページ
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『なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記』(野口卓・集英社文庫)(第6作)
『あっけらかん よろず相談屋繁盛記』(野口卓・集英社文庫)(第5作)
『なんてやつだ よろず相談屋繁盛記』(野口卓・集英社文庫)(第1作)