『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』
鳴神響一(なるかみきょういち)さんの文庫書き下ろし現代ミステリー、『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』(幻冬舎文庫)を献本いただきました。
本書は、美人で正義感の強いご令嬢ヒロイン、一色桜子が、被疑者の「濡れ衣を晴らす」ことに奔走する、弁護士ミステリーの第2弾です。
弁護士の一色桜子は、ヴァイオリンの恩師・浦上紗也香のコンサート会場で浦上から悩みごとの相談があると言われる。だが浦上は演奏中に倒れ、病院で死亡。司法解剖で毒殺されたことが判る。恩師の相談とは何だったのか? 悲嘆にくれる桜子に更なる衝撃が。弁護士会からの連絡で当番弁護士として接見した男は、なんと恩師の事件の被疑者だった。
(本書カバー裏紹介より)
桜子は多摩川駅近くにある、弱小弁護士事務所の玉川パートナーズ法律事務所に勤務する、若手弁護士です。
桜子は、子供の頃から習っていヴァイオリンの恩師、浦上紗也香から、自身が演奏する室内楽のコンサートに招待されました。
演奏会の前に、楽屋を訪れた桜子は、紗也香から相談したことがあると言われ、明日にでもメールで連絡すると言われました。
いきなり、紗也香の音色が止まった。
弓とヴァイオリンが床に転がる音が響いた。
少しだけ続いていたほかの楽器の音色が不揃いに止まった。
残りの三人も次々に弓を弦から離したのである。
紗也香はずるりと椅子から滑り落ち、床板の上に横向きに倒れた。
(『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』P.28より)
ステージ上でドヴォルザークの『アメリカ』を演奏中の紗也香が突然倒れました。
桜子は紗也香が救急車で運び込まれた病院に駆けつけましたが、面会がかなわず、後ろ髪を引かれる思いで家に帰りました。
翌朝の朝刊の記事で、紗也香の急逝を知った桜子は大きなショックを受けました。
「あり得ないことなんです。誰より大切な人を殺すなんて、太陽が西から昇っても絶対にあり得ない」
頬を引きつらせ、額に筋を立てて内藤は懸命に訴えた。
「落ち着いてください。あなたが殺人容疑で逮捕されたことに間違いはないのですね」
「だから、そんなことはぜんぶ警察の嘘なんです」
(『令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース』P.56より)
今回の事件は、被疑者が自分の罪を認めない否認事件であり、桜子が自分の弁護士としての使命である、冤罪事件を晴らすことにつながる可能性がありました。
内藤が誰よりも大切な人というのは、ヴァイオリニストの浦上紗也香でした。その死因は、司法解剖の結果、病死ではなく毒殺であり、殺人容疑で逮捕されたと、内藤は話しました。
恩師の毒殺とその被疑者の弁護という衝撃の展開に、桜子は……。
警察ミステリーの『脳科学捜査官 真田夏希』シリーズに続き、この『令嬢弁護士桜子』も好評を博して始まっています。
が、ファンとしては、時代小説の新作も心待ちにしています。
令嬢弁護士桜子 チェリー・カプリース
鳴神響一
幻冬舎文庫
2020年6月15日初版発行
本書は、文庫書き下ろし
カバーデザイン:舘山一大
カバーフォト:Getty Images
法律監修:弁護士 鈴木ゆりか(三田国際法律事務所代表弁護士)
●目次
第一章 暗闇の終曲
第二章 カピキオーニの響き
第三章 『カプリース』の謎
第四章 鎮魂の旋律
本文328ページ
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