シェア型書店「ほんまる」で、「時代小説SHOW」かわら版を無料配布

「高家」の跡継ぎ、吉良三郎義央の若き日を描く新シリーズ

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

高家表裏譚1 跡継上田秀人さんの文庫書き下ろし長編小説、『高家表裏譚1 跡継』(角川文庫)を入手しました。

吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)というと、「忠臣蔵」の敵役として知名度抜群ながら、江戸城松之大廊下で浅野内匠頭に唐突に斬りつけられるまでの前半生はあまり知られていません。

幕府と朝廷の礼法を司る「高家」に生まれた吉良三郎義央は、13歳になり、将軍・徳川家綱から名門・吉良家の跡継ぎと認められた。高家の役割は、朝廷への使者の他に、大名や旗本の官位官職の斡旋などがある。今回は、前田家と毛利家が昇爵を目論み、吉良家への音物(進物)が届けられた。だが三郎は、父・義冬から、幕府に反抗的な毛利家に対し、厳しい通達をするよう命じられ――。武家の光と闇を描く、待望のシリーズ!
(カバー裏の内容紹介より)

本書は、幕府内の礼法を司る「高家(こうけ)」を務める、名門吉良家に生まれた、三郎義央(後の上野介)を主人公にし、その過酷な運命を描く、「高家表裏譚」シリーズの第1作です。

「なぜ、余がこのような目に遭う。余は高家として、いたすべきをしてきただけだというに」
 吉良上野介がうつむいたままで呟いた。
「高家こそ、武士の鑑。武家を導く者である」
「…………」
 聞いていた大石内蔵助が、固唾を呑んで見守る同志たちに向けて首を左右に振った。
「御無礼つかまつりまする。お覚悟を」

(『高家表裏譚1 跡継』P.8より)

吉良上野介義央は、遺恨をもった赤穂浅野家の旧臣らによって、邸内に押し込まれた末に首を取られました。

承応三年(1654)、13歳の三郎義央(後の上野介義央)は、将軍・徳川家綱に目通りを許されて、吉良家の跡継ぎとして認められ、「高家」としての役目の第一歩を踏み出すところから、本書はスタートします。

「御上における秩序は、高家が担う。大名しか監察できぬ大目付、旗本だけしか取り締まれぬ目付とは違う。高家は、江戸城へ登るすべての者を教え導くのが役目。道を外れたならば、叱ってもとに戻してやることこそ、高家の情けぞ。ゆえに、今回の除目で吉良は動かぬ。いや、昇爵を止めるほうに回る。毛利長門守が位階をあげるにふさわしい人物となるまでな」

(『高家表裏譚1 跡継』P.60より)

跡継ぎとして将軍に認められた三郎は、父の吉良義冬より、高家として訓戒を受けます。義冬は毛利家からの音物(贈り物)を三郎に示して、その多寡が礼儀であるとして、毛利大膳大夫綱広の除目(官位官職)の斡旋をしないと伝えます……。

本書では、知られざる高家の役目や、幕府におけるさまざまな礼法、それらをめぐる大名家の闘いを描いていきます。

なぜ、吉良上野介は旧浅野家家臣たちに討たれなければならなくなったのか、その答えは出されるのか、気になるシリーズの始まりです。

高家表裏譚1 跡継

著者:上田秀人
角川文庫
2020年3月25日第1刷発行
文庫書き下ろし

カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:岡田ひと實(フィールドワーク)

●目次
第一章 高家の夢
第二章 格と慣例
第三章 言葉の戦い
第四章 城中慣習
第五章 偽りの栄誉

本文299ページ

■Amazon.co.jp
『高家表裏譚1 跡継』(上田秀人・角川文庫)

上田秀人|時代小説リスト
上田秀人|うえだひでと|時代小説・作家 1959年大阪府生まれ。大阪歯科大学卒。 1997年、「身代わり吉右衛門」で、小説CLUB新人賞佳作受賞。 2009年、2014年、「奥右筆秘帳」シリーズで、『この時代小説がすごい!』文庫書き下ろし第...