芝村凉也さんの文庫書き下ろし時代小説、『長屋道場騒動記(六) 迷い熊匿す』を入手しました。
心優しき巨躯の剣士「迷い熊」こと間野生馬が悪を討つ! 痛快人情活劇シリーズ第六弾です。
十年に及ぶ廻国修行から江戸に戻ると、亡父が開いた道場は留守の間に長屋となってしまい、生馬は神田弁慶橋脇の老舗菓子舗『惠比壽屋』に居候しています。
強敵佐々島との死闘を制すも、傷を負ってしまった生馬。ほどなく回復するものの、惠比壽屋の一人娘お君と亡父源心の過去の経緯から、再び十河藩の魔の手が伸びることを危惧し、仁蔵に探索の協力を求める。仁蔵の調べで十河藩では世継ぎを巡る二派の訌争が激化していることが判明し、今後の事態が憂慮されるなか、生馬の道場に十河藩士二人が現れ――。
(表紙裏の内容紹介より)
生馬は、刺客である佐々島との戦いで怪我を負いながらも、その後、呉服屋を襲わんとする、ならず者たちを退ける働きをしました。
反町は、繁華な通りを歩く人々の様子をのんびりと眺めながら、それまでと変わらぬ淡々とした調子で続けた。
「だから、たとえお前さんがこの一件で何やらかそうがおいらは知らねえし、耳に入れるつもりもねえ」
「! ――旦那っ」
仁蔵は、耳を疑うような反町の言葉に思わずハッとなって顔を上げた。(『長屋道場騒動記(六) 迷い熊匿す』P.27より)
無私とも思えるような生馬の働きに心酔した岡っ引きの仁蔵は、手札をいただいている南町奉行所の定町廻り同心、反町款弥の許しを得て、生馬が見舞われている大名家十河藩との因縁の渦に飛び込もうとします。
一方で、十河藩の重役たちの思惑は複雑に入り乱れ、お家騒動はますます激化していきます。
さて、今回いよいよ、生馬の父・源心と『惠比壽屋』の主・惣兵衛の、十河藩との過去のいきさつが明らかになっていきます。
本シリーズを2019年度のベスト10の第7位に推しました。
生馬ばかりでなく、岡っ引きの仁蔵、同心の反町、そして、千葉道場の面々など、皆、情に厚く、正義感のある人物で、正しく勧善懲悪がなされていくところに、読み味の良さを感じています。
カバーデザイン:長田年伸
カバーイラストレーション:森豊
●目次
第一章 その翌日
第二章 始動
第三章 接触
第四章 錯綜
第五章 暴発
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『長屋道場騒動記(六) 迷い熊匿す』(芝村凉也・双葉文庫)(第6弾)
『長屋道場騒動記(一) 迷い熊帰る』(芝村凉也・双葉文庫)(第1弾)