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大坂商人・一夜(かずや)、剣の名門・柳生家の武士となる

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勘定侍 柳生真剣勝負(一) 召喚上田秀人さんの文庫書き下ろし時代小説、『勘定侍 柳生真剣勝負(一) 召喚』を入手しました。

多くのヒットシリーズをもつ、著者の新シリーズのはじまりです。
大坂の商人で育った若者が武士に。それも剣術大名・柳生家に仕えるということで、どんな活躍を見せるのか、興味津々です。

大坂一といわれる唐物問屋淡海屋の孫・一夜(かずや)は、突然現れた柳生家の者に御家を救えと、無理やり召し出された。ことは、惣目付の柳生宗矩が老中・堀田加賀守より伝えられた、四千石の加増にはじまる。本禄と合わせて一万石、晴れて大名となった柳生家。が、大名を監察する惣目付が大名になっては都合が悪い。案の定、宗矩は役目を解かれ、監察される側に立たされてしまう。惣目付時代に買った恨みから、難癖をつけられぬよう宗矩が考えた秘策が一夜だったのだ。しかしなぜ召し出すのが商人なのか? 廻国中の柳生十兵衛も呼び戻されて。風雲急を告げる第一弾!
(表紙裏の内容紹介より)

主人公の一夜は、大坂一の唐物問屋淡海屋七右衛門の孫で二十歳の若者。七右衛門の一人娘の佐登は、命を救った兵法家の柳生宗矩に一目惚れして押しかけて一緒に暮らして、一夜を産みます。三歳のときに母を失った一夜は、七右衛門が跡取りとして、大坂一の商人にするために教育していました。

「表にはできぬ大名の監察……それは大名の罪を暴くことではない。公方さまが指定された大名の罪を作る。それを柳生家は求められたのだ。今回のお取り立ては、その役目に対する褒章の前渡しだ。裏の役目ではどれほど手柄をたてても、それを褒めたたえるわけにはいかぬ」
 
(『勘定侍 柳生真剣勝負(一) 召喚』P.31より)

寛永十三年(1636)、六千石の旗本柳生但馬守宗矩は、老中堀田加賀守より、四千石の加増を伝えられ一万石の大名となります。その日の午後に惣目付の職を解かれました。

六千石の旗本と一万石の大名では、家政が大きく変わります。領地が増えて、付き合う相手も変わり、面目への考え方も違ってきます。なにより、家臣を増やさなければなりません。

人が増えれば、金もかかります。武に優れた者が多いが、勘定に通じている者が少ない柳生家。但馬守が召し出すことを決めたのが、一夜でした。

「商いでなにが一番あかんか、おわかりですかいな」
「損を出すことでございましょう」
 一夜に訊かれた武藤大作が言った。
「それもあきまへんけどな、損して得取れということわざもおますねん。今は損でも、一年先、二年先に儲けになって返ってくる。それは商いとして成功になります」
「では、なにがいかぬと」
「無駄ですわ」
 苛立ちを見せた武藤大作に一夜が述べた。
 
(『勘定侍 柳生真剣勝負(一) 召喚』P.127より)

実父の柳生宗矩に召し出された一夜は、江戸に直接向かわずに、柳生の庄に寄ることを宗矩の家臣で付き人の武藤大作に告げます。そして商いの要諦を使って、その理由を説明します。

こてこての大坂の商人・一夜が、剣に生きる柳生家の人びととどのようにかかわっていくのか、楽しみにしています。

カバーイラスト:西のぼる
カバーデザイン:鈴木俊文(ムシカゴグラフィクス)

●目次
第一章 奪われる血
第二章 待ち受ける穴
第三章 無理難題
第四章 剣と金
第五章 衝突する思惑

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『勘定侍 柳生真剣勝負(一) 召喚』(上田秀人・小学館文庫)

上田秀人|時代小説リスト
上田秀人|うえだひでと|時代小説・作家 1959年大阪府生まれ。大阪歯科大学卒。 1997年、「身代わり吉右衛門」で、小説CLUB新人賞佳作受賞。 2009年、2014年、「奥右筆秘帳」シリーズで、『この時代小説がすごい!』文庫書き下ろし第...