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大名倒産を目論む父。継いだ御家は火の車、若殿の運命は?

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大名倒産 上浅田次郎さんの長編時代小説、『大名倒産 上』『大名倒産 下』(文藝春秋)(文藝春秋)を入手しました。

もっと時代小説を書いてほしいと思う作家の一人に、浅田次郎さんがいます。
本書は、著者、久々の笑いあり、涙ありのエンターテインメント時代小説です。

隠居の父が企むは、前代未聞の計画倒産。
前途多難の若き殿様に貧乏神まで取り憑いて……

泰平の世に積もりに積もった大借金に嫌気のさした先代は縁の薄い末息子に腹を切らせて御家幕引きを謀る。
そうとは知らぬ若殿に次々と難題が降りかかる!
笑いと涙の経済エンターテインメント、始まり、始まり――
(上巻 表紙カバー帯の内容紹介より)

松平和泉守信房は、数え二十一歳、五カ月前に越後丹生山(にぶやま)三万石の家督を継いだばかりの若殿です。先代が村娘にお手を付けて生まれた四男。

八朔の式日、江戸城に登城した和泉守は、下城差留のうえ、老中板倉周防守にから譴責を蒙ることになりました。

年始献上品と家督相続の折の献上品目録に記された献上の品を届けていない、「目録不渡(もくろくふわたり)」。要するに畏れ多くも将軍家に対して、紙切れを献上して空約束を続けているということでした。

 ふいに、御老中の厳しい声が降り落ちてきた。
「和泉守殿。できぬ約束ならば、せぬほうがよい」
「いえ、誓うてお約束いたしまする」
「無理じゃ」
 何が無理なのかと思うそばから、御老中はきっぱりと言った。
「御尊家には、金がない」
 なんと、我が家に金がない。
 それも千両二千両の大枚ならいざ知らず、たかだかの銀馬代を一度ならず二度まで滞納しているとは。

(『大名倒産 上』P.22より)

丹生山松平家には、総額二十五万両にも及ぶ借金がありました。歳入一万両に対して、年間の支払利息は三万両という、挽回不能な状況でした。

この窮状を知った嫡男は急死し、隠居の父で先代は、和泉守にすべて押し付けて前代未聞の計画倒産、いや御家お取り潰しを画策しました。

糞がつくほど真面目な若殿・和泉守の運命はいかに。この難題にどのように立ち向かうのでしょうか。
前途多難な若殿には、貧乏神まで取り憑いてしまいます。

装丁:野中深雪
イラスト:川口澄子

●目次
上巻
前口上
一、和泉守殿下城差留之事情
二、十二年前過日之追懐
三、越後丹生山松平家縁起
四、悠悠閑閑無暦日
五、冷水一椀百万石
六、中屋敷御蔵内之有様
七、本郷元町九尺二間裏長屋
八、一狐裘三十年
九、嫁取手形五百両
十、道中百里五泊七日
十一、御黒書院就封之儀
十二、会津道中御本陣憂患
十三、和泉守殿初之国入
十四、難攻不落天下之要害
十五、御不在中江戸表之様子
十六、北之丸御重役会議
十七、御領分錦繍之彩
幕間

下巻
十八、天長地久一千町歩
十九、国家老之憂鬱
二十、御留守居役之憂鬱
二十一、私財献上快雪之朝
二十二、歳末支払無情之御仕打
二十三、待望三月新鮭出来
二十四、癸亥諸諸之正月
二十五、丹生山黎明千石船
二十六、堂島御蔵屋敷始末
二十七、御死も屋敷不意之来客
二十八、春爛漫黄金栄耀
二十九、江戸表花之酔醒
三十、禍福交交国不破

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『大名倒産 上』(浅田次郎・文藝春秋)
『大名倒産 下』(浅田次郎・文藝春秋)

浅田次郎|時代小説ガイド
浅田次郎|あさだじろう|作家 1951年、東京都生まれ。 1995年、『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞受賞。 1997年、『鉄道員』で直木賞受賞。 2000年、『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞受賞。 2006年、『お腹召しませ』で中央公論...