尾崎章(おざきしょう)さんの文庫書き下ろし時代小説、『伊勢の風 替え玉屋 慎三 2(しんぞう)』(祥伝社文庫)を入手しました。
江戸・深川で、髪結い床を営むかたわら、類まれな化粧の技術で人を別人に成りすませる「替え玉屋」という裏稼業を行う、慎三とその仲間たちが活躍する痛快時代小説の第2弾です。
廻船問屋尾張屋は、商売敵である遠州屋の差し金で、専売許可札を盗まれ燃やされてしまった。札がなければ船荷が番所を痛感できず、店は潰れる。尾張屋に泣きつかれた稀代の策士慎三は、荒事に不向きな筆屋の文七を尾張屋の船に乗せ、見切り発進させる。手本もない札の花押、署名、割り印をどう復元するというのか。絵dから伊勢へ、遠州屋と瀬戸際の攻防が始まる。
(カバー帯の紹介文より)
慎三が懇意にしている両替商桔梗屋の主人・惣兵衛と一緒に、日本橋の廻船問屋尾張屋の番頭竹蔵が慎三の髪結い床にやってきました。
三日前の深夜に尾張屋に盗賊が押し入り、主人と手代が殺されて、五百両が盗まれました。しかし被害はそれだけでなく、伊勢炭を独占的に取り扱うための許可札も持ち去られたといいます。
それは、伊勢田代藩が特産物で、紀伊の備長炭と並ぶ貴重な炭で、江戸では高級料亭向けに高値で取引される伊勢炭を独占的に取引できる専売許可札です。それが盗まれたことが公になると、尾張屋は伊勢田代藩との取引が続けられなくなるというものでした。
慎三は、その許可札を三日以内に取り戻してほしいと相談を受けます。
「初対面の慎三さんに大変不躾なお願いをしていることは重々承知しています。ですが、なんとか助けていただきたのです」
慎三は再びうーんとうなると、惣兵衛に言った。
「惣兵衛さん、あたしの裏稼業は替え玉屋ですよ?」
「それは承知しています。ですが、慎三さんの仕事ぶりは単なる替え玉作りを超えている。斬回の仕事もそうだったではないですか?」
(『伊勢の風 替え玉屋 慎三 2』P.27より)
慎三は、尾張屋に押し入った盗賊一味と、替え玉屋の仲間の〈丑三つの辰吉〉が何やら関わり合いがあることがわかり、竹蔵の依頼を受けることになります……。
盗まれた専売許可札の“替え玉”を作れるのか、難しい依頼を果たして崖っぷちの廻船問屋を救えるのか、この先のストーリー展開が気になります。
●目次
序章
第一章 〈闇疾風〉
第二章 出帆
第三章 郡奉行
第四章 浦賀番所
第五章 賭け
終章
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『替え玉屋 慎三』 (尾崎章・祥伝社文庫)(第1作)
『伊勢の風 替え玉屋 慎三 2』 (尾崎章・祥伝社文庫)(第2作)