知野みさき(ちのみさき)さんの文庫書き下ろし時代小説、『江戸は浅草2 盗人探し』(講談社文庫)を入手しました。
浅草六軒町の久兵衛長屋、通称「六軒長屋」には六軒の家があり、住人はみな独り身で、元矢師(矢を作る職人)の真一郎、笛師の大介、錠前師兼鍵師の守蔵、面打師(能面を作る職人)の多香、胡弓弾きの鈴、大家の久兵衛が暮らしていました。
曲者ぞろいで、手に職をもつ者ばかり、その過去も不明ながら、協力し合って長屋の周りで起こった騒動を解決していく痛快人情小説シリーズ第2弾です。
吉原の妓楼・尾張屋で、遊女の小間物を盗んでいるやつがいる。楼主の頼みで、真一郎と大介は盗人探しに乗り出すが……。不遇な遊女の運命に涙する「盗人探し」ほか、元矢師の用心棒・真一郎と洒落者の大介、出自不明の美女・多香など、貧乏長屋の住人がおせっかいと男気で事件解決に奔走する人気シリーズ!
(文庫カバー裏の紹介文より)
主人公の真一郎は、矢師を辞めて身の振り方に悩んでいたところを、両替商の隠居でもある大家の久兵衛に拾われて、用心棒兼雑用係として六軒長屋に暮らしはじめます。
本巻では、殺しや手込めの咎人を見つけたこともある何でも屋の真一郎に、色男の大介の幼馴染みの遊女・冬青(そよご)を抱える吉原の妓楼・尾張屋の楼主から、遊女たちから小間物を盗る犯人探しを依頼される、「盗人探し」をはじめ、連作4篇が収録されています。
「まったく真さんはお情け深ぇぜ」
「俺ぁ、明日また中に行って来る。なんとか千鳥に会って、もう一度幸助が何者なのか、しっかり訊き出してくるからよ」
「まだるっこいなぁ……なぁ、真さん。いっそ、その櫛は俺らで売り払って、津軽――いや一粒金丹でも買いに行こうぜ。そいつを幸助からの礼だと言って千鳥に渡しゃあいい。千鳥にも山吹にもばれやしねぇよ」
(『江戸は浅草2 盗人探し』「第一話 盗人探し」P.57より)
犯人探しに乗り出した真一郎と大介の会話から、真一郎の誠実で人情味あふれるキャラクターが伝わってきます。真一郎と、同郷の常陸出身の遊女との会話シーンで泣いてしまいました。(最近、涙腺が弱くなっています)
「津軽」とは、当時津軽地方が阿芙蓉(阿片)の一大生産地(海外貿易で津軽に入ってきたという説もあります)であったことから、そう呼ばれています。阿芙蓉は、「一粒金丹」などの鎮痛薬に用いられていました。
また、本書では、櫛が事件の鍵となるアイテムになっていますが、江戸時代の女性にとって貴重な装身具であり、贈り物にされることも多く、もっとも身近な小間物でした。
シリーズ第2弾は、江戸情緒が楽しめ、涙あり、笑いあり、爽快感ありのストーリーで、人生で大切なことが学べます。
目次
第一話 盗人探し
第二話 預かり物
第三話 破寺の雪女
第四話 辻射り
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『江戸は浅草2 盗人探し』(知野みさき・講談社文庫)(第2巻)
『江戸は浅草』(知野みさき・講談社文庫)(第1巻)