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真田家に伝わる斬馬衆―上田秀人さんの新シリーズ

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『斬馬衆お止め記 御盾(ざんばしゅうおとめき・みたて)』は、上田秀人さんの文庫書き下ろしの新シリーズ。三代将軍家光時代の松代藩真田家と幕府との攻防を描いている。この時代の真田家当主は信之。『真田太平記』『獅子』などの真田もので、信之の凄さを楽しんできた池波正太郎ファンとしては涙モノの設定である。

真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)

真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)

獅子 (中公文庫)

獅子 (中公文庫)

『御盾』の主人公仁旗伊織(にきいおり)は、戦で本陣まで突っ込んできた敵の騎馬武者を全長一丈(約三メートル)の大太刀を振るって食い止める、斬馬衆という戦国時代に生まれた真田藩独自の武門のほまれ高い役目。とはいえ、徳川幕府のもとで戦がなくなったこの時代、刀を一日磨いて禄をいただく斬馬衆は真田家にとって無用の長物となろうとしていた。

関ヶ原に遅参したことを恨みに持つ大老土井利勝は、真田家を取り潰すべくお手伝いという名の強制の賦役を科し続けてきた。七十歳を超えた老齢の信之のもとで幕府の無理難題になんとか耐えてきたが、藩の財政は逼迫していた。折りしも老中の御用部屋では大井川の堤防普請のお手伝いをどの大名にさせるか検討されていて、利勝は真田にさせようと画策していた…。

「斬馬衆は本陣へ接近する敵を倒すのが役目であろう。ならば、藩に無理難題を押しつけてくる幕府の手をはらうのも任といえよう」

…(中略)

「仁旗伊織、幕府の隠密から藩を守り、弱みをつかまれぬように防げ」

(『御盾』P.44より)

伊織は、信之の嫡男で信政より、藩を守るために密命を与えられる。

利勝と老中松平伊豆守信綱、伊賀組、戦陣坊主らの権謀術数に、伊織の剣が閃く。

スケールの大きな政治抗争、権力者の非情さ、次々に襲い掛かる敵にと傷つきながらも勇気をもって立ち向かうヒーロー、気丈で凛とした美しさをもつヒロイン、精神面で落ち込む主人公を救う師と献身的に主人公を支える従者の存在、『この文庫書き下ろし時代小説がすごい!』で第一位になった、上田ワールドがこのシリーズでも堪能できる。ああ、早く第2作目が読みたい。