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黒船騒乱の渦中で、部屋住剣士が活躍する痛快小説

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その後も歯科治療を続けている。

差し歯は仮歯を入れるが、接着が弱かったために、またぐらつきだして、ついには外れてしまう。ちょうどイベントの打ち上げの帰り、夜10時過ぎに駅のホームで電車を待っているときのこと。外れた歯を口から取り出して保管しようとしたところ、手からこぼれて駅のホームに転がってしまう。電車が入線してきて焦るが、拾って電車に乗り込むがちょっとブルーになる。月曜の朝イチに歯科へ行って、仮歯を入れなおしてもらい、何とか事なきを得る。

差し歯のほうより困った問題は、親知らずだった。院長先生曰く、右下奥にできた親知らずが歯を動かしたことが原因で、差し歯に力が加わり今回の事態に発展したとのこと。「すぐに抜きましょう」の一言で、親知らずを抜かれることに。前歯が仮歯のうえに、奥歯を抜歯されて、ちゃんとしたものが食べられなくなってしまう。おまけに、左下奥にも奥歯が横向きになってしまい、「シザースバイト」という状態になっていると指摘され、噛み合わせを悪くしているということで、抜歯されることになる。あー、ブルーの度合いはますます濃くなる。

そんなこともあり、2週間ブログのアップを怠ってしまう。

植松三十里(うえまつみどり)さんの『黒船の影 築地外国方事件始末』を読む。植松さんは2003年に『桑港にて』で歴史文学賞を受賞された注目の時代小説作家である。『大奥開城』や『天璋院と和宮』などが文庫化されているが、新人物往来社も文庫を始めたので、『桑港にて』も文庫で読める日が来るかも。

黒船の影 (PHP文庫)

黒船の影 (PHP文庫)

桑港(サンフランシスコ)にて

桑港(サンフランシスコ)にて

大奥開城―女たちの幕末 (双葉文庫 う 11-1)

大奥開城―女たちの幕末 (双葉文庫 う 11-1)

天璋院(てんしょういん)と和宮(かずのみや) (PHP文庫)

天璋院(てんしょういん)と和宮(かずのみや) (PHP文庫)

さて、『黒船の影 築地外国方事件始末』は、PHP文庫としては珍しい文庫書き下ろしで刊行された時代小説。

やや小柄で、甘い顔立ち。二十七歳という年齢よりも、若く見えられる。次男坊の部屋住の身だけに、性格も気ままで、剣しか取り柄がない。

(『黒船の影 築地外国方事件始末』P.6より)

主人公の薮内耕之介(やぶうちこうのすけ)は、下級幕臣(三十俵二人扶持の伊賀者)の次男坊で兄・源太郎の厄介になっている部屋住の身。

耕之介は、築地明石橋のたもとで釣りを装って黒船見物をしているときに、白頭巾をかぶった美人の尼僧・春宵院に声をかけられ、大男と木刀で勝負した。その翌々日、耕之介は兄とともに大奥に呼び出されて、春宵院より今から出かけるので供をするように依頼される。春宵院の出かけ先は、海防目付の旗本・獅村図書頭(しむらずしょのかみ)の屋敷だった。

海防目付は、定員五、六人で、海防に関する具体策を、老中に上申する知的集団。獅村は昌平黌出身で、密かに海外事情を学び、それから海防目付の役についたという。昌平黌の学長の林大学頭がペリーとの直接交渉の応接掛を務めることになるが、開国の反対派が大学頭の暗殺を企てているという。そこで、大学頭の身代わりとして獅村が浦賀に出かけるが、その警護を耕之介に命じられる。

本編の魅力のひとつが、耕之介とともに警護に加えられた面々がユニークな点。ライフル銃の名手で西洋砲術家の石野帯刀、先に耕之介と勝負した大男で操船術にたけた熊田鐵次郎、鷹犬牽きの家の子で動物ならなんでも使いこなす少年伊勢崎準太と白犬のシロ、そして情報収集役の春宵院という面々。得意技を生かした活躍ぶりが何とも痛快である。

おすすめ度:★★★★