C・Wニコルさんの『特務艦隊』を読んだ。本書は、『盟約』『遭敵海域』に続く、日本帝国海軍軍人・銛一三郎(もりいちさぶろう)を主人公とした、海洋小説三部作の完結編である。本作で描かれている時代が大正時代であり、ジャンルでいえば時代小説には含められない、戦争小説というべきか。しかしながら、このシリーズの主人公の三郎の父・甚助は、『勇魚(いさな)』の主人公であり、この一家には思い入れがある。
- 作者: C.W.ニコル,C.W. Nicol,村上博基
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江戸時代末期、和歌山・太地の鯨捕りの息子・甚助を主人公にした『勇魚』は、私の中では海洋時代小説のベスト1と思うくらい、大切にしている作品である。そのストーリー展開の面白さ、主人公のかっこよさ、スケール感と時代性、どれをとっても傑作に値するものであり、さらに驚嘆すべきことは、それが外国人作家によって丹念な取材の末に書かれた日本の時代小説であることである。
本書の主人公・銛一三郎は、カナダに渡った甚助とアイルランド人の妻スーザンの間に生まれ、江田島の海軍兵学校を出た日本海軍の軍人。得意な英語を駆使して国際的に活躍する軍人であり、正義感の強いヒーローであり、武術の達人でもある。
第一次世界大戦下、1916年12月、三郎はマルタ島勤務を命じられる。日本海軍の地中海への艦隊派遣を前に、先乗りしてイギリス海軍と協力して、情報収集に務めることが指令であった…。
この本を読むまで、日本が第一次世界大戦の末期に、日本海軍が遠く地中海まで派遣されていた。しかも、跳梁するドイツ軍のUボートから連合軍の輸送船を守るべく、果敢に戦ったという事実を知らなかった。本シリーズでは、戦闘シーンも含めて、海洋のシーンが映画のように目の前に浮かぶように、大迫力で描かれている。軍艦の船上の描写から、船隊の様子まで、よく知らなかっただけに勉強になった。
この作品で、三部作は完結するようであるが、読み終えてある種の感慨が残った。いずれまた、別の作品に中で、銛一家の人々に会いたいと思う。
おすすめ度:★★★★