和田はつ子さんの『すみれ便り』を読んだ。江戸の歯医者さん、口中医の藤屋桂助が治療に推理に大活躍する「口中医桂助事件帖」シリーズの第5弾である。桂助を房楊枝職人の鋼次と医師の娘・志保が助ける三人のチームワークが心温かくなるシリーズに、新しいキャラクターが加わった。紀州藩を脱藩して浪人になり、入れ歯作りを身すぎ世すぎとする本橋十吾である。
- 作者: 和田はつ子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/06/06
- メディア: 文庫
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入れ歯治療で悩んだ桂助は、あごが落ちるほどの歯痛も治してくれるという寒梅地蔵の前で、熱心に祈る中年の男と出会った。本橋は敵持ちの身であり、討たれる覚悟をしていたが…。
このシリーズの魅力は何といっても、江戸の歯科事情がしっかりと描かれていること。とくに今回は入れ歯作りにスポットが当てられていて、興味深い。入れ歯作りの名人が登場し、勘所を示したりして、思わず引き込まれる。