諸田玲子さんの『こんちき』を読む。『あくじゃれ瓢六捕物帖』に続く、色男の小悪党、瓢六が活躍する痛快時代小説シリーズの第2弾である。シリーズの第2作目というのは、とても重要な位置にあると思う。シリーズ化が成功するかどうかの決め手になっているのではないだろうか。そういう意味で、シリーズ第2弾という作品に注目している。
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『こんちき』では、前作で難事件を次々に解決し、その功績から牢獄と娑婆を行き来する生活を免除され無罪放免された瓢六が登場する。瓢六は、売れっ子芸者で恋人のお袖の家に転がり込んでヒモのような生活を送り、暇をもてあますようになっていた。さて、今回はどういう展開を見せるのか期待が高まる。
牢獄へ潜入するというスリリングな設定に代わって、瓢六は反骨精神でお上を困らせる存在である瓦版に手を染めることになる。
迷コンビの北町同心・篠崎弥左衛門やその上役の与力・菅野一之助、岡っ引きの源次などのおなじみの面々が個性豊かな活躍ぶりを見せるほか、貸本屋で瓦版の発行元の賀野見堂の主人弐兵衛や絵師の筧十五郎など、新キャラクターも加わり、面白さがグレードアップしている。長屋の仲間たちを集めて瓦版を作り売り出すところが何とも愉快だ。2作目の成功パターンといえる。
物語の中で奉公人の出替わりを描いている箇所があり、江戸の風習を知ることができる。
茶菓を供され、四半刻も話し込んで帰ろうとしたところ、店のほうで騒ぎが起こった。
「帳場には人がいたんじゃねえのか」
「はじめは番頭さんがいたけど、あたしが来たことをご主人に知らせるために一旦奥へ入って……」
「そんときは店にだれかいたのか」
「さあ、なにしろ今日は出替わりだから、みんな出たり入ったり忙しそうで」
「そうか、三月五日か」
(『こんちき あくじゃれ瓢六捕物帖』P.145より)
出替わりとは、武家や商家で1年または半年契約の奉公人が入れ替わる日のこと。