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浮世絵師国芳と遠山の金さん

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河治和香(かわじわか)さんの『侠風むすめ(きゃんふうむすめ)』を読んだ。河治さんは、『秋の金魚』で第2回小学館文庫小説賞を受賞された、注目の時代小説家。『秋の金魚』では、江川太郎左衛門配下の二人の男の間で、恋に悩む女性を主人公に配して幕末から明治初期の時代を情感込めて描いていた。

国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)

国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)

秋の金魚 (小学館文庫)

秋の金魚 (小学館文庫)

『侠風むすめ』は、天保の改革の頃(天保十二年夏~)の江戸が舞台。浮世絵師歌川国芳と能天気で妙ちきりんな弟子たちとが織りなす浮世模様と、国芳の娘で女絵師の登鯉(とり。画号は一燕斎芳鳥)の目から描く、連作形式の時代小説。

登鯉は、刺青が大好きで博打場にも平気で出入りするような“侠風(きゃんふう)”な美少女。通俗的な浮世絵師たちに囲まれて育ったこともあり、早熟なおちゃっぴいぶりが、江戸らしさをビビッドに伝えていて、何とも魅力的なヒロインの誕生である。また、天保の改革を「即席頓智」で鋭く風刺する国芳という絵師に、あらためて強い関心を持った。

同時代人として、遠山の金さんこと、江戸北町奉行遠山左衛門尉景元も登場する。金さんといえば、肩から腕にかけて見事な桜吹雪の彫りものを入れていたといわれているが、その彫りものが物語の中で大きな意味を持つことになる。ちなみに刺青を「入れ墨」ではなく、「文身」または「彫りもの」と区別して書かれているところに、江戸風俗画家の三谷一馬さんに師事して、江戸の風俗を学んだ著者らしさを感じた。

書き下ろしでシリーズ化されていくようなので、今後の展開が何とも楽しみである。