佐伯泰英さんの『鯖雲ノ城』を読んだ。『野分ノ灘』と同時刊行された「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズの第21弾だ。われらが坂崎磐音はおこんさんと一緒に、故郷の豊後関前に到着。明和九年(1772)に起こった悲劇以来五年、藩を離れてから二度目の帰郷である。
- 作者: 佐伯泰英
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/01/01
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今回は、江戸を離れて豊後・関前の自然の中での坂崎磐音の活躍ぶり、そしておこんが坂崎家および関前の人たちにいかに受け入れられるかといったところが読みどころ。サービス精神旺盛な佐伯さんらしく、とっておきのドラマティックな場面も用意している。
豊前関前は架空の町だが、『鯖雲ノ城』の巻頭ページに、藩の絵図が掲載されていて面白い。ちょうど、藤沢周平さんにおける海坂藩のようである。
さて、タイトルの鯖雲は耳慣れない言葉だが、物語中では以下のように説明されている。
石段を上るについれ、関前湾が眼下に大きく広がる。白波が立つ海に帆桁を下ろしている正徳丸と豊後一丸に、荷船が群がって荷下ろしする光景が箱庭の光景のように見えてきた。
おこんはこの光景に新たな感動を覚えた。視線を海から上げると白鶴城が聳え、優美な天守が鰯雲の空を背景に浮かんでいた。
<中略>
「おこんさん、関前ではこの雲を鯖雲と称してな、鯖の豊漁の兆しと漁師を喜ばしておる」
「鯖雲の城ですか」
と磐音の説明におこんが頷き、
<後略>
(『鯖雲ノ城』P83より)
関サバでおなじみの豊後らしい、描写だなあ。ともかく、今回の磐音の帰郷を機に、物語は新しい局面に入っていくことが予想されて、ますます楽しみである。