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恐るべき青年剣士、日向森之助

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北方謙三さんの『鬼哭の剣』を読んでいる。

今回は、日向景一郎の弟、森之助を主人公に物語が進む。薬種問屋の使いで、薬種採取をする菱田多三郎のいる越後糸魚川を訪れた森之助の青春を描いていく。十五歳になった森之助。幼いころから二十歳になったら、兄と生死を賭けて立合い、死ぬと思い続けてきた森之助。残された時間はあと五年。長いのか短いのかわからない。なんと苛烈な青春だろうか。

そのせいか、森之助は自然に逆らわない考え方で、達観した感じを与える。しかも、兄ほどではないが、祖父日向将監が流祖の日向流(ひなたりゅう)の遣い手であり、痩せてはいるが鋼のような体をしている。小走りよりも早く歩き、腕の筋肉だけで蛇を殺し、海に入れば海女と同じくらい潜り、崖を這い登る、まさに十五にして既にスーパーマンぶりを見せる。

一読者として、森之助が今後、どのように成長していくのか、兄とどのように対決するのか、兄を越えることはできるのか、気になるところだ。

ところで、糸魚川藩は一万石の小藩だが、作品に描かれた時代(北方さんは年号をはっきりと明記することはしないが)は、越前松平家(松平秀康を祖とする家系)の分家福井松平家(秀康の次男松平忠昌の子孫)の支藩が入っている。