今日も、高妻秀樹さんの『胡蝶の剣』を読んでいる。
主人公のタイ捨流の剣豪・森本一房の前に、柳生宗矩の命を受けた柳生五郎右衛門宗俊(石舟斎の四男の柳生五郎右衛門宗章ではない)が率いる裏柳生が立ちはだかる。時は、慶長十五年三月、豊臣秀頼が伏見にて徳川家康と会見することになった。
豊臣家の滅亡と秀吉恩顧の大名取り潰しを考える将軍秀忠。その手足として働く宗矩が柳生一門と伊賀忍者の手だれを集めて作り出した諜報暗殺組織が裏柳生。肥後藩主加藤清正は秀頼の護衛に一命を懸け、一房も清正の近侍の一人として万一に備えることに……。
裏柳生の本領は、敵の虚をつくこと。夜陰に乗じ集団で相手を襲い、騙し討ち、不意打ち、放火、破壊、撹乱、毒殺などいかなる手段を駆使してでも目的を果す。この裏柳生が敵役になったことで、物語の面白さがグンと高まった。
裏柳生との戦いというと、隆慶一郎さんの『影武者徳川家康』『捨て童子松平忠輝』などを思い出すが、一房の剣の冴えも『吉原御免状』松永誠一郎に通じるものを感じる。誠一郎は、師の宮本武蔵ゆずりの二天一流だが、一房もタイ捨流から二刀を自在に遣う体捨二刀流を確立していく。
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