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心理状況が現代的な捕物小説

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畠中惠さんの『ぬしさまへ』を読了。捕物好きの病弱な若だんなを妖怪たちが助ける、ファンタジー時代小説として人気で、『ねこのばば』『おまけのこ』と、続編も次々と刊行されている。

装画の柴田ゆうさんのかわいいイラストの効果もあり、キャラクター造形の楽しさが大きな魅力だ。今回は、若だんなを支える薬種問屋の手代仁吉に大きなスポットが当たっていて、シリーズものの楽しさが満喫できる。「ぬしさまへ」は、その仁吉がもらた付け文(ラブレター)が事件の大きな鍵を握る。また「仁吉の思い人」は、その仁吉の片思いを描いたロマンティックな話。

しかしながら、この作品がスゴイのは、ユーモアやファンタスティックなところや、謎解きばかりでない。絶望感から心に鬼を飼った娘、遺産相続をめぐる肉親の争い、将来への不安から弱い生き物を虐待して気を紛らす男、モラル・ハラスメント(ことばの暴力)に怯える人たちなど、現代の犯罪にもつながる心理状況がきちんと描かれているところは見逃せない。

ぬしさまへ (新潮文庫)

ぬしさまへ (新潮文庫)

ねこのばば

ねこのばば

おまけのこ

おまけのこ

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