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極上の時代小説をごちそうさま

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今朝のめざましTVを見ていたら、山田洋次さんの時代劇第三弾「武士の一分」は木村拓哉さん主演に決まった。今回の原作も藤沢周平さんで、『隠し剣秋風抄』に収録された短編「盲目剣谺返し(もうもくけんこだまがえし)」だそうだ。

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)

さて、時代小説アンソロジーの『花ふぶき』を読み終えた。一話終わるごとに、違う本に手を出したので、ひと月以上かかってしまった。今、もっとも脂の乗った仕事をされている作家ばかりで、しかも3編書き下ろしが収録された贅沢な極上時代小説集である。

収録作品のラインナップは以下の通り。

磯波/乙川優三郎

お蝶/諸田玲子

寒紅おゆう/佐伯泰英 ★

ははのてがみ/高橋義夫 ☆

かくし子/杉本章子

廉之助の恋/鈴木英治 ★

今朝の月/今井絵美子 ★

代替わり/山本一力 ☆

★は書き下ろし、☆は単行本未収録なので、一言コメントしたい。

「寒紅おゆう」:剣豪ヒーローが痛快な活躍ぶりを見せる人気シリーズの多い佐伯さんには珍しいしっとりとした情感あふれる市井小説。新たな面を見た気がする。

「ははのてがみ」:許されない仇討ちの末に島流しになった息子へ送られ続けた母からのてがみ。田舎の母を思い出して、目頭が熱くなった。

「廉之助の恋」:緊迫感あふれるチャンバラシーンと、実験的でミステリアスな構成に、作者の才気を感じる。

「今朝の月」:仇討ちに参じる弟と姉の姉弟関係の描写がきめ細かくて見事。藤沢周平さんや乙川さんの作品が好きな方にはぜひおすすめしたい。

「代替わり」:死神と呼ばれる高利貸しの老人と取り立て屋の大女、金を借りに来る者たちの人物造形にオリジナリティがあって面白い。

本作品集は文芸評論家の結城信孝さんの自信のセレクションであるが、ほかに女流時代小説家の作品を選んだ『浮き世草紙』と『合わせ鏡』があり、どちらも絶品だ。