杉本章子さんの「信太郎人情始末帖」シリーズの第3弾『狐釣り』が文庫になった。杉本さんは明治初期に活躍した浮世絵師小林清親を主人公とした『東京新大橋雨中図』で、第100回直木賞を受賞した実力派の時代小説作家。
そのほかにも、江戸の草創名主で「江戸名所図会」の著者で知られる斎藤月岑を描いた『名主の裔』や明治初期に世間を騒がした落語家三笑亭可楽を描いた『爆弾可楽』など、寡作ながら印象深い作品を産み出している。
「信太郎人情始末帖」シリーズの第一作『おすず』では、平成14年度中山義秀文学賞を受賞している。太物問屋の跡取り息子信太郎と吉原の引手茶屋の女将おぬいの恋を中心に、周囲で起こる事件を描き、随所に江戸の風物や人情を織り込んだ、捕物スタイルの連作小説である。
今回も、信太郎とおぬいの恋がどんなふうな展開を見せるか、はたまた幕末近くの江戸をどんなふうに伝えるのか、興味がつきない。
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