『御家の狗 (講談社文庫)』を読了。戦国時代末期から江戸初期を駆け抜けた徳川の漢(おとこ)たちの存在感あふれる骨太の生き様を描いた中短篇集で、一話一話が読みごたえがあった。ここで描かれている大久保長安、大久保忠隣、本多正信、本多正純は、単なる家康の側近というばかりでなく、各々が激動の時代を生き抜いた者だけがもつ輝きを持っていて魅力的だ。
とくに「花ざかりの杏の木」に描かれた本多正純が印象的だ。福島正則の改易の仕掛け人として悪評をもつ正純が、実際は正則の弁護に躍起となっていたという解釈が面白い。随所で見せる正純の素顔が、秀忠を取り巻く官僚たちと違い人間味あふれている。
こんな個性的な彼らを中心に、家康の半生を描くような長編小説を読んでみたくなった。ぜひ、岳宏一郎(たけこういちろう)さんに書いてほしいと願っている。
ところで、先日逝去された杉浦日向子さんの追悼文が、マンガ作品を意欲的に刊行していた筑摩書房のサイトに、掲載されていた。当時の担当編集者の松田哲夫さん(「王様のブランチ」でおなじみ)によって、当時のエピソードと病気のことについて書かれていた。追悼文を読み、悲しみがまた新たになった。やはり素敵な人だった。
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