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はぐれ牡丹(2)

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はぐれ牡丹 (ハルキ文庫 時代小説文庫)』を読み終え、少しいい気分になった。山本一力さんのお得意の深川を舞台にした、人情味と情感あふれる時代小説だ。

ヒロインは、日本橋の両替商の娘ながら好きな男と駆け落ちして、夫と四歳になる息子と貧しいながらも幸せに暮らす一乃。深川冬木町の裏店に住み、慣れない棒手振りで野菜を売り、家計を助ける一乃が、ある日、竹やぶで一分金を拾ったことから、物語は始まる。

徳川十一代将軍の家斉治世下の文政四年。貨幣の改鋳がたびたび繰り返されるという時代背景のもとで、深川の裏店に住む人々を事件が襲う。作中で、当時の貨幣流通のメカニズムをわかりやすく解説している。とくに大判の表面に偽造防止のために墨書がされていて、薄くなると判料一分二朱を取って大判座にて書き直したということは興味深かった。

生来の明るさと特有の直感力で何かと突っ走りがちの一乃と、沈着冷静な夫・鉄幹、やんちゃながらも母思いの息子・幹太郎、産婆のお加寿、手伝いのおあきとその兄・分吉、農家のおせきら、登場人物たちのキャラが立っていて読んでいて楽しい。

ちなみに大判は十両に兌換され、一分は一両の1/4で、一朱は一分の1/4(つまり一両の1/16)になる。現在と貨幣価値が異なるので、何を物価の基準にするかで大きく違ってくるが、一両は4万円~30万円ぐらいの間に収まることが多いので、12~15両ぐらいで考えておけば、いいのではないだろうか。

一文と一両の価値

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