安藤優一郎さんの『観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)』を読了。約100万人の人口を抱え、参勤交代などで絶えず住人が入れ替わった江戸を、一大観光都市としてとらえ、その観光事情をあきらかにした江戸入門書。都市・江戸=観光地というとらえ方は、地方出身者から見た東京とイメージが重なり、スムーズに受け取れる。
著者は、将軍吉宗の観光振興策やその意図、観光の中心となった寺社の集客力などをわかりやすく解説してくれている。とくに寺社が頻繁に行った開帳のメカニズムが面白い。開帳とは、通常は秘仏として参拝を許可しない仏像を、当の寺社が一定期間のみ、公開して信者に結縁の機会を与える、現在でも広く行われている宗教的行事のこと。開帳には、その神仏を所持する寺社で行う居開帳と、地代を払って他の寺社の境内を借りて催す出開帳の二種類がある。ヒットすると、短期間に多額の臨時収入ができ、寺社にとって魅力的な行事だったらしい。
もう一つ興味深かったのは、成田山新勝寺の江戸出開帳戦略。元禄の頃までは一地方寺院に過ぎなかった成田山は、江戸時代に繰り返して実施された出開帳を通して、全国区の寺院となり、現在でも初詣でにぎわうトップブランドになっている。出開帳成功に向けての周到な準備や、メディアミックス戦略など、今のディズニーリゾートなどのテーマパーク運営に通じるところがある。今まで成田山新勝寺に行ったことがなかったので、ぜひ参詣してみたい。
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