『宗旦狐―茶湯にかかわる十二の短篇 (徳間文庫)』を通勤時間に読み始めた。限られた紙数の中に、いろいろな人間性が活写された澤田ふじ子ワールドが構築されていて、期待通りの作品。「幾世の椿」という話で、戦国武将の松永弾正のことに触れられていたが、ステレオタイプでない扱いになっていてちょっと新鮮だった。
松永弾正久秀というと、三つの悪行をなしたことから、史上に名高い悪役武将として描かれることが多い。足利十三代将軍義輝を殺害したこと、主君に当たる三好義興を殺したこと、東大寺大仏殿を焼いたことで、一つでもなしたら恐れ多いことを三つもやり遂げたために極悪非道の武将として描かれることが多い。
『遊部』や『戦国秘譚 神々に告ぐ』のように、スーパーヒールとして描かれた時代小説も面白いが、松永弾正をヒーローにした、彼への評価が変わるような作品も読んでみたい気がする。下剋上が当たり前であった戦国時代に、都に近い位置で武将として名をなしたということを考慮すると、倫理観のない残虐な武将とは思えないところはある。
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