「城が見たい」という欲求を満たすべく、このゴールデンウィークに、埼玉県行田市にある忍城(おしじょう)を訪れました。
忍城といえば、天下統一を前にした豊臣秀吉配下の石田三成による大軍による水攻めを城代・成田長親率いる小勢の籠城で守り抜いたことで知られています。
映画化もされた和田竜さんの『のぼうの城』をはじめ、風野真知雄さんの『水の城―いまだ落城せず』、宮本昌孝さんの『紅蓮の狼』など、この逸話を描いた時代小説でもおなじみです。
沼や深田などの天然の要害部分は埋め立てられ整備されて学校や住宅地となっていて、“浮き城”と呼ばれたかつての面影は隣接する水城公園にわずかに残るばかりです。
城跡は、三階櫓が再建されて、行田市郷土博物館となっています。
博物館の常設展示では、古墳時代の土器や埴輪を展示した「古代の行田」、成田氏によって支配された「中世の行田」、阿部氏など五人の老中を輩出した「近世の行田」、18世紀以降足袋の名産地となった「足袋と行田」など、見どころが多いものとなっています。
行田市には、県名「埼玉」の由来となった「埼玉(さきたま)古墳群」もあります。
とくに、9基の大型古墳が群集するさきたま古墳公園は古代ファンならずとも一見の価値があります。公園内にある、埼玉県立さきたま史跡の博物館には、国宝に指定されている、5世紀の雄略天皇時代の金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)が展示されています。
同じく公園にある丸墓山古墳は、石田三成が忍城攻めに際して陣を張った場所といわれていて、古墳の上に昇れるようになっています。
頂上に立って、眼下に水を満々と湛えた石田堤を想い浮かべて三成気分に浸ってみるのも一興でした。
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『のぼうの城 上』(和田竜・小学館文庫)
『水の城―いまだ落城せず 新装版』(風野真知雄・祥伝社文庫)
『紅蓮の狼』(宮本昌孝・祥伝社文庫)