杉本章子さんの『その日 信太郎人情始末帖』を読んでいる。毎回、江戸情緒、人の愛と憎しみを描き、ドラマティックな展開とあいまって、お気に入りのシリーズである。
火事の怪我がもとで視力を失った呉服太物店「美濃屋」の主・信太郎の身を案じるおぬいは、女中奉公をする。信太郎の目が回復しないまま、美濃屋では手代頭が店を辞め、別家の菱屋は美濃屋の得意先に主家との約定を破って出入りをするなど、揉め事が続く。そんなある日、江戸に大きな地震が起こる…。
シリーズ第6作目の今回は、呉服太物店の主になった信太郎の新しい生活とともに、安政の大地震の発生したその日が描かれている。地震が起きたときの人々の動きが複眼的にとらえらえていて面白い。
物語中で、江戸城の御金蔵が破られて、小判四千両が盗まれた事件のことに登場人物の一人が触れるシーンがあり、興味深かった。
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