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子どもたちを奪還するために、市兵衛は死地へと向かう

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修羅の契り 風の市兵衛 弐辻堂魁さんの大人気シリーズ「風の市兵衛」の最新刊、『修羅の契り 風の市兵衛 弐』(祥伝社文庫)を紹介します。

病弱の妻の薬礼を得んがため人斬りに身をやつした信夫平八(しのぶへいはち)。断腸の想いで平八を刀に掛けた唐木市兵衛は、彼の忘れ形見、小弥太と織江とともに新しい生活を始める。日々、絆を深くする市兵衛と子どもたち。
そんな中、岡っ引の文六、お糸夫婦が寝込みを急襲された。さらに、幼い兄妹が行方不明に……。

前作『暁天の志』からスタートした「風の市兵衛 弐」シリーズの第2作目です。
平八の子どもたちを引き取った市兵衛は、雉子町から永富町の土もの店(つちものだな)に引っ越します。

 土もの店とは、神田青物市場の多町、連雀町とともに、青物三ヵ町と認められ、青物納屋役所へ町内の問屋を当番勤めに出している永富町の、根菜を主に扱う店が二階家を並べる、そこも神田の青物市場である。
 
(『修羅の契り 風の市兵衛 弐』P.23より)

市兵衛は、宰領屋の矢藤太の仲介で、裏猿楽町の旗本大久保東馬の屋敷で、当家の台所の収支勘定をつける渡り用人の仕事に就きます。

家禄千二百石ながら小普請支配の無役で、台所は火の車ながら、当主の東馬にその認識がなく、豪腕の相談役大木駒五郎も付いていて、前途の多難さをうかがわせる状況。市兵衛の得意の“算盤侍”ぶりを発揮するチャンスです。

平八の亡くなった妻由衣のかつての許婚で、平八に斬られた宝蔵竜左衛門が仕返しをするために、平八と由衣の消息を求めて、江戸に出てきました。

さて、市兵衛の長屋に、由衣の弟で、小弥太と織江の叔父にあたる、北最上藩士金木脩が現れます。市兵衛になぜ子どもたちを引き取ったのか事情を尋ねます。

 お父さん、お父さん……
 小弥太と織江が平八を呼んでいた声が、市兵衛の脳裡に聞こえた。平八の姿が甦り、市兵衛の感情は音をたてて乱れた。
 市兵衛は、脩の若やいだ風貌へ眼差しをそそいだ。
「金木さんに、わたしとこの子たちと、この子たちの両親とのかかり合いを、お話ししなければならないのでしょうね」
 
(『修羅の契り 風の市兵衛 弐』P.164より)

市兵衛が大久保家に出かけている間に、小弥太と織江は、編笠をかぶり刀を差した、侍のような何者かに連れ去られてしまいます。子どもたちがいなくなり、市兵衛は大きく動揺し、大いに苦しみます。

そして、子どもたちを奪還するために、市兵衛は死地へと向かい、“修羅の刃”を揮う侍と対峙します。

本書では、これまでのシリーズの作品と趣きを変えて、市兵衛の父性ぶりが丹念に描かれています。家族の物語、人間ドラマとして堪能できます。
読了後に、心の中を一陣の風が吹き抜けた感じに囚われました。

◎書誌データ
『修羅の契り 風の市兵衛 弐』
著者:辻堂魁
祥伝社・祥伝社文庫
初版第1刷:2018年5月20日
ISBN978-4-396-34414-6
本体680円+税

カバーデザイン:芦澤泰偉
カバーイラスト:卯月みゆき
336ページ

●目次
序章 六道の辻
第一章 土もの店
第二章 仕かえし
第三章 修羅の町
第四章 死闘千駄ヶ谷
終章 ご褒美

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『暁天の志 風の市兵衛 弐』(辻堂魁・祥伝社文庫)
『修羅の契り 風の市兵衛 弐』(辻堂魁・祥伝社文庫)